大阪・関西万博会場では10月13日までの会期中、世界各地の国・地域の賓客を迎える迎賓館のエントランスを、立山町虫谷の和紙職人、川原隆邦氏が制作した和紙アートの作品(1・5メートル×6・5メートル)が彩っている。作品制作は、川原氏が日本各地を訪れて厳選した富山など7都道府県の素材を使い、日本の自然や風土を表現した和紙の新たな形を模索する試みだ。「BIRUDAN」をシリーズタイトルとし、会期中に入れ替えながら計7作を発表するが、迎賓館には一般客が立ち入ることはできない。川原氏が各作品を解説し、それぞれに込めた思いを全7回にわたって語り尽くす。(聞き手・柵高浩)

※作品入れ替えに合わせて随時掲載します

シリーズ4作目は、山形県花の紅花を使用した「The Crimson Legacy」=大阪・関西万博会場内の迎賓館

山形が生産量日本一の紅花

  シリーズ4作目のタイトルは「The Crimson Legacy」で、6月30日~7月25日まで展示する。山形県が日本一の生産量を誇り、県花でもある紅花を使用した。栽培に適した最上川の肥沃な大地と気候を生かし、古くから染料や口紅の原料として使われ、紅花の文化が発展してきた。今回協力いただいた河北町は山形県のほぼ中央にあり、かつて最上川の舟運の集散地として栄えた。「雛(ひな)と紅花の里」として知られる町だ。

紅餅から作られた和紙

 作品に使った素材は「紅餅」。紅花を染料にするための加工品で、花びらをつぶして固めたもの。今回は、紅餅を染料ではなく、紙をすく前の原料である「紙料」に使って制作した。紅餅は一見すると紅色なのだが、その内側にはたくさんの色が隠れている。その素材の色を引き出して制作に取り組んだ。

さまざまな色彩を生み出す紅餅

感謝の思いが詰まった作品

  知り合いがおらず情報も乏しい中、昨年7月に山形県に向かった。「まぁ何とかなる」と思い、紅花畑を探しに向かったものの、訪問した日は警報級の大雨。どの畑にも人の姿はなかった。

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