昨年11月13日付の北日本新聞朝刊、プロ野球日本海リーグのドラフト会議の記事を見た瞬間、アニメ「機動戦士ガンダム」の劇中歌「シャアが来る」が脳裏に流れた。指名選手一覧にあったのは「▽捕手=關口赤彗星(池田高)」の名前。「赤彗星」と書いて「シャア」と読む。名前の由来は言うまでもなくガンダムシリーズの最重要キャラクター、「赤い彗星」ことシャア・アズナブルだ。今季から富山GRNサンダーバーズで登録名を「シャア」として白球を追い、リーグ優勝、そしてNPB(日本野球機構)入りを目指す。富山で奮闘する「赤い彗星」に迫った。


昨秋のドラフト会議の結果を伝える11月13日付の北日本新聞朝刊。捕手に「關口赤彗星」の名前がある

熱烈ファンの父が命名 


 「他人とかぶることはないし、覚えてもらいやすいし。この名前を嫌だと思ったことはないですね」。シャアは19歳らしいあどけなさの残る笑みを浮かべながら話した。名付けたのは熱烈なガンダムファンである父の唯(ゆい)さん(47)。長女は光宇宙(ララァ)さん(23)、次女は風光雲(フラウ)さん(21)というから筋金入りだ。早世したが、次男も青巨星(ランバ)さんという名前だった。

 履歴書などに氏名を書く際、ふりがなは「しゃあ」とひらがなにしているが、本人の感覚では常にカタカナの「シャア」だ。ローマ字表記も「SHAA」ではなく作品と同じ「CHAR」という認識でいるという。ネットニュースで取り上げられたこともあり、名前に批判的な意見を目にしたこともある。「いろんなことを思う人がいるんだな、という程度ですね」と全く意に介さない。

シャア専用プロテクター


 兵庫県加古川市出身。幼い頃からの夢だったプロ野球選手を目指し、より高いレベルでのプレーを求めて、高校は「やまびこ打線」の異名で知られる徳島の名門・池田高校に進んだ。身長178センチ、体重90キロのがっちりとした体格。甲子園には届かなかったものの、強肩強打の捕手として注目され、高校3年生時にプロ志望届を出した。指名はなく、改めてNPB入りを目指して次の進路にサンダーバーズを選んだ。

 球団のこれまでのチームカラーは緑で、今季から濃紺になった。選手の誰もが濃紺の帽子やヘルメットを身に着ける中、シャアだけは赤いヘルメットに赤いマスクとプロテクター。そして胸には「CHAR」の4文字。まさしく「シャア専用」だ。

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