大阪・関西万博では10月13日までの会期中、世界各地の国・地域の賓客を迎える迎賓館のエントランスを、立山町虫谷の和紙職人、川原隆邦氏が制作した和紙アートの作品(1・5メートル×6・5メートル)が彩っている。作品制作は、川原氏が日本各地を訪れて厳選した富山など7都道府県の素材を使い、日本の自然や風土を表現した和紙の新たな形を模索する試みだ。「BIRUDAN」をシリーズタイトルとし、会期中に入れ替えながら計7作を発表するが、迎賓館には一般客が立ち入ることはできない。川原氏が各作品を解説し、それぞれに込めた思いを全7回にわたって語り尽くす。(聞き手・柵高浩)
※作品入れ替えに合わせて随時掲載します
和紙文化が浸透していない沖縄で制作

波打ち際での制作の様子。作品に波をトレースした
シリーズ5作目は、和紙文化が浸透していない沖縄県をテーマに据え、石垣島(石垣市)の海岸で制作した。現地で採取した「青雁皮(アオガンピ)」と八重山博物館のワークショップで栽培した「リュウキュウトロロアオイ」を素材に用いた。
シリーズを通し、できるだけ従来の制作技法を使わないようにしてきたが、今回はその中でも特異な作品に仕上がった。海岸で海水を使って制作したのは私にとっても初めてで、代表作の一つになると思っている。波打ち際で制作し、波の動きをトレースして作品に反映させた。砂浜の砂は土と異なって水を瞬時に浸透させることができるので、道具も使わなかった。
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