4月13日に開幕した大阪・関西万博。10月13日までの会期中、世界各地の国・地域の賓客を迎える迎賓館のエントランスを、立山町虫谷の和紙職人、川原隆邦氏が制作した和紙アートの作品(1・5メートル×6・5メートル)が彩っている。作品制作は、川原氏が日本各地を訪れて厳選した富山など7都道府県の素材を使い、日本の自然や風土を表現した和紙の新たな形を模索する試みだ。「BIRUDAN」をシリーズタイトルとし、会期中に入れ替えながら計7作を発表するが、迎賓館には一般客が立ち入ることはできない。川原氏が各作品を解説し、それぞれに込めた思いを全7回にわたって語り尽くす。(聞き手・柵高浩)

※作品入れ替えに合わせて随時掲載します

人の手で作られた茶畑をイメージしたシリーズ3作目の「Lull」=大阪・関西万博会場内の迎賓館

「ちょっと一服」京都がテーマ

 シリーズ3作品目(展示期間6月4日~29日)のタイトルは「Lull」。英語で「一服」の意味だ。今回は、京都府宇治市のお抹茶を題材に選んだ。作品に使った素材は、宇治茶の生産者さんから分けていただいた「お抹茶」で紙料を作り流し込んだ。

抹茶を使った紙料
抹茶を流し込む川原さん
水滴を飛ばして立体的に

 「お抹茶を漉(す)き込む」。身近なのにこれまでノーマークだったお茶を使った作品制作は、初めての体験だった。

残り1191文字(全文:1759文字)