大阪・関西万博では10月13日までの会期中、世界各地の国・地域の賓客を迎える迎賓館のエントランスを、立山町虫谷の和紙職人、川原隆邦氏が制作した和紙アートの作品(1・5メートル×6・5メートル)が彩っている。作品制作は、川原氏が日本各地を訪れて厳選した富山など7都道府県の素材を使い、日本の自然や風土を表現した和紙の新たな形を模索する試みだ。「BIRUDAN」をシリーズタイトルとし、会期中に入れ替えながら計7作を発表するが、迎賓館には一般客が立ち入ることはできない。川原氏が各作品を解説し、それぞれに込めた思いを全7回にわたって語り尽くす。(聞き手・柵高浩)

※作品入れ替えに合わせて随時掲載します

第6作の「Solidarity」の制作作業。デニムと和紙を結びつけることになった

 シリーズ6作目の「Solidarity」は、8月21日~9月15日まで展示する。岡山県の児島(倉敷市)のデニムを素材として取り入れた。児島は、かつて綿織物の産地として栄え、その後は学生服の産地、国産ジーンズ発祥の地にもなった。世界的なデニムブランドの集積地として知られ、国産ジーンズの聖地として注目を集める「児島ジーンズストリート」には、海外からも多くの観光客が訪れている。他のシリーズに天然素材が多かったので、人が作った文化的な素材をあえて使いたいとの思いが強かった。

〝らしさ〟の中間値にこだわり

 作品タイトルの「Solidarity」は連帯や結束、一致団結、つなぐとの意味を持つ言葉だ。デニムに国産のイメージを持つ人は少ないかもしれないが、実は世界に誇る国産品でもある。「デニム生地」と「和紙」は、どちらも植物の繊維からできており「融合の相性は良いのだろう」と思ったのがきっかけだ。友人のつてで児島のデニム職人を紹介され、関係者や実際の作業場を案内していただき、素材や加工作業の様子を見せていただくことができた。そして、制作作業では、デニムらしさと和紙らしさの中間値を探ることで、相性の良さを生み出すことにこだわった。

残り728文字(全文:1579文字)