大阪・関西万博では10月13日までの会期中、世界各地の国・地域の賓客を迎える迎賓館のエントランスを、立山町虫谷の和紙職人、川原隆邦氏が制作した和紙アートの作品(1・5メートル×6・5メートル)が彩っている。作品制作は、川原氏が日本各地を訪れて厳選した富山など7都道府県の素材を使い、日本の自然や風土を表現した和紙の新たな形を模索する試みだ。「BIRUDAN」をシリーズタイトルとし、会期中に入れ替えながら計7作を発表するが、迎賓館には一般客が立ち入ることはできない。川原氏が各作品を解説し、それぞれに込めた思いを語り尽くしてきた。最終回は自身の制作拠点である富山編とし、特別に2作品を展示する。(聞き手・柵高浩)

※作品入れ替えに合わせて随時掲載します

制作作業に没頭する川原氏=立山町虫谷の工房

1作品に収まらない思い 富山の秋の情緒描く

 富山を題材に選んだ今回は、一つの作品に収めきれないとの思いがあり、2作を上下に繋げることで一つの作品になるように構想した。前期(16日~28日)の「The Golden Harvest」は収穫時期に合わせた実りの作品。富山の水田の豊かさや恵みに着想を得て、稲穂をふんだんに使用した。春には水が張られた田が鏡のように空や山を映す。夏は育った稲が風に流れていく。そして、秋には育った稲穂が一面を黄金色に彩り、富山の景色を育んでくれる。

稲穂を配置していき、黄金の風景を作り出す

 後期(29日~10月13日)の「Astral Compass」は、これまでも好んで題材にしてきた「月」がテーマで、中秋の名月に合わせた。2作を通じて、日本ならではの季節感を表現することができた。

残り952文字(全文:1654文字)