編集室 この方の場合、まずできることは何でしょうか?

 今回の場合に限らず、基本ですが家族内の事(家事、育児)は家族間の協力なしには成り立ちません。家族の最小ユニットは夫婦です。ご夫婦で家庭内の現状を把握・理解して、協力できるかが鍵となります。

この方の場合、まずは相談者さん自身の特性と家庭で行いたい工夫について夫がどれだけ知っているのでしょうか。伝えてなかった場合にはそれを伝えることから始まります。次に、ご夫婦で互いの意見を出し合い、違いを統一していき協力体制を作ります。その上で、ご夫婦協力のもとに家事や育児の姿勢を義母に伝えていきます。理解したり支えたりなど、夫の担う役割は重要だと思います。特に義母の理解が必要な今回の場合は夫の協力なしには成り立ちません。

編集室 夫婦で協力することが大切なのですね。

 夫の理解や協力が難しい場合も少なくないのですが。。。

もう一つ、相談者の方に伝えたいのは、味方をたくさん見つけてほしい、ということです。自分のやり方や工夫について話を聞いて、応援してくれるサポーターです。その中には、私たちのような専門的な知識を持つ人間も必要です。

なかなか理解をしてもらえない人と相対する時(夫の理解や協力が難しい場合も)、専門家が入って話すことで流れが変わってくることがあります誤解者を理解者にするということです。誤解を持つ人ほど、特性によって苦しんでいることが分かり理解者になると、とても心強い存在となります。

私は、どうしても理解してもらえない家族がおられるとき、その方に疑問点を持っていらしてくださいと伝えることがあります。実際に来られることはそれほど多くはありませんが、専門家がそのやり方を認めているというメッセージを誤解者に伝えることが、理解のきっかけになっているようです。

子どもさん、そして御家族のサポーターが増えることを願っています。ただし、サポーターが多くなると、混乱することがありますのでご注意下さい。

 


森 昭憲(もり・あきのり)

県発達障害者支援センター「ほっぷ」センター長
富山県リハビリテーション病院・こども支援センター 小児科部長(児童精神)・精神科部長  心理療法科長

1970年生まれ。富山医科薬科大学(現富山大学)医学部医学科卒業。
内科、和漢診療を経て、精神科病院に勤務。あいち小児保健医療総合センター心療科、豊田市こども発達センター、愛知県立城山病院(児童精神・精神科)にて児童精神医学・発達障がい診療の研修。
2017年より富山県リハビリテーション病院・こども支援センターに勤務し、子どもの心の外来・精神科の診療を担当する。資格は精神科専門医・指導医、精神保健指定医

【ひとコト】子どもの特徴を知り、特徴に合わせた工夫や手立てを考えていくことが、子どもがより良い人生を歩んでいくことにつながります。また子どもにとって真に過ごしやすい社会は、大人も過ごしやすくなると考え、日々診療しています。


県発達障害者支援センター「ほっぷ」は、教育現場や福祉施設で、発達障害の方を支援する人たちの支援、人材育成を通して、富山県が皆さんにとって住みやすくなるよう活動しています。詳しくはhttps://www.toyama-reha-hop.jp