みなさんこんにちは。私は社会福祉法人新川会地域生活相談室で相談員をしている北川と申します。この度ご縁がありコノコトプラスに「発達凸凹が愛おしい」と題して連載をさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。初回は私の自己紹介を踏まえ、私と発達障害支援との出会いについてお話しをさせていただきます。

 

衝撃的な光景 数日後には入職申し出

それは今から40年以上前、知人の紹介で開設間もない富山市の障害者支援施設「めひの野園」を見学した時のことでした。そこには同じ行動を繰り返す人、同じことを何回も聞いてくる人、泣き叫びながら自分の頭を壁に叩き続ける人など、いろいろな特徴を持った人たちが生活しておられました。また、その行動を止めることができず途方に暮れる保護者さんの姿もありました。

めひの野園がある呉羽丘陵。自然豊かな景色が心を穏やかにしてくれる

のちに、彼らは自閉症(発達障がい)と呼ばれる人たちであり、その行動はこだわり、オウム返し、パニック(自傷行為)であることを知りました。その衝撃的な光景に戸惑いながらも、もっと彼らのことを知りたい、自分に出来ることはないのか、との思いに駆られ、数日後には自ら入職を申し出ていました。

支援とは何か 自問自答する日々

めひの野園では行動障害のある重度の自閉症の人たちとの試行錯誤の日々がありました。また、その後の出向先の富山県発達障害者支援センター「ほっぷ」では、乳幼児期から学齢期、成人期の方の相談に東奔西走する日々がありました。

振り返ってみると、いつの時代にも当事者さんやご家族さんの「孤独で弱い立場、ときには犯罪者のような肩身の狭い立場」は変わらないように感じており、その都度「もっと当事者さんやご家族さんが安心して受けられる支援はないのか」「そもそも支援とは何なのか」と自問自答を繰り返してきました。そして、そんな思いが消え失せることなく、ついつい40年の月日が流れてしまいました。

発達凸凹とは、簡単に言えば得意なことと苦手なことの差が著しく大きい状態にあることを言います。しかし、「発達凸凹が大きい=発達障害」ではありません。誰にでも多かれ少なかれ発達に凸凹があり、その苦手な部分も含めてその人の一部(個性)なのだと思います。私は、そうした苦手な部分(個性)とどう向き合うか、他人事ではなく自分事としてどう捉えることができるかが、発達障害の人たちを理解する上でとても大切であると考えています。今回、そのような想いを込めて「発達凸凹が愛おしい」とのタイトルを付けさせていただきました。

次回からは「発達障害の特性と支援」について、当事者さんとのエピソードを交えながら紹介させていただきます。失敗談だらけで決して自慢げにお話できるものではありませんが、少しでも読者のみなさまの今後の支援にお役立ていただければ幸いです。

(連載は全6回。毎週水曜に公開予定です)

北川忠(きたがわ・ただし) 富山大教育学部卒。社会福祉法人めひの野園で長年、自閉症や成人の発達障害者の支援にたずさわり、2016年から県発達障害者支援センター「ほっぷ」に赴任。24年から社会福祉法人新川会、地域生活相談室に勤務。現在も発達障害に関する研修会講師や相談業務を行う。富山短大幼児教育学科非常勤講師。67歳。