編集室 就学に向けて、しておくと良いことは?

 ご家庭では、お子さんが理解しやすいように目で確認できる情報を併用し、コミュニケーションの幅を広げる工夫をしてみてはいかがでしょうか。例えば身振り手振りをまじえる、伝えたいことを絵や写真に置き換える、関連する道具などを示しながら伝えるなどです。また、“自分の気持ちを分かってもらえた”という安心感が大切な時期ですので、お子さんの気持ちに共感しつつ場面や状況に応じた表現の仕方を代弁しながら知らせてあげると良いと思います。

図鑑を見ているときには「ライオンってどんなふうに泣くのかな?」「ガオーかな?」とか。絵本を見ている時にも言葉を加え、感情表現も加えてみて下さい。親御さんが感じたり思ったりした表現で良いんです。子どもさんが「違っている!」と言ったら、そこから会話が広がっていくのも良いものです。「うわ」「おお」など擬態語、擬声語、身振り手振りも使ってみてください。こういう時には、こんな言葉を使うんだよということを意識して、言葉の背景にある感情や気持ちを子どもに伝えていくような習慣が大切ではないかと思います。

コミュニケーションの6割以上が身振り手振りなど非言語と言われています。悲しいときは暗い表情で、うれしい時には明るい表情で話し、感情や気持ちに応じた表情や身振り手振りなど言葉以外の色々な表現についても、お子さんに伝えてほしいです。

人間は日々いろんなことを考え、感じて、これに喜怒哀楽が加わり、行動につながっていきます。この喜怒哀楽、気持ちの表現が言葉であり、うまく気持ちを表現できると人生は豊かになります。つまり言葉が先ではなく、気持ちが先。喜怒哀楽をしっかり味わうことがまず大事で、そのことができるようになると、言葉もついてくると思います。
なので、親御さんたちには、生活の中でお子さんと一緒に楽しいことを見つけて気持ちを分かち合ったり、面白い事を笑ったり、時には怒ったりもあると思いますが、親子で喜怒哀楽をじっくり味わって過ごし、お子さんの感情を育ててほしいですね。

編集室 就学について相談するとすれば、いつごろから? 

 年長の夏休みまでの間に一度、園の担当の先生と話す時間(立ち話でなく)を設けてもらうことをお勧めします。その時には今と今後の心配なことを率直に伝えて、園での様子をじっくり聞いてみるといいと思います。また、お子さんには内緒で、こっそり園の様子を見ると、家とは違う様子を見ることができたりもします(親御さんが園に行くことをお子さんが知ると、真の姿を見えてこない事が多いので注意ください)。

就学前には地区相談会があります。日頃から園の先生とコミュニケーションを密にしていれば「事前に相談に行ったほうがいいですね」などアドバイスしてもらえるかもしれませんし、日程や相談窓口などを聞くこともできると思います。

 


森 昭憲(もり・あきのり)

 

県発達障害者支援センター「ほっぷ」センター長
富山県リハビリテーション病院・こども支援センター 小児科部長(児童精神)・精神科部長  心理療法科長 

1970年生まれ。富山医科薬科大学(現富山大学)医学部医学科卒業。
内科、和漢診療を経て、精神科病院に勤務。あいち小児保健医療総合センター心療科、豊田市こども発達センター、愛知県立城山病院(児童精神・精神科)にて児童精神医学・発達障がい診療の研修。
2017年より富山県リハビリテーション病院・こども支援センターに勤務し、子どもの心の外来・精神科の診療を担当する。資格は精神科専門医・指導医、精神保健指定医