質問 大人になってから、発達障害のグレーゾーンという診断を受けました。不注意や忘れ物が多く、家事が下手で義母に無視されています。自分のやり方で手抜きや工夫をしたくても、義母が嫌がるのでできません。さらに昔から感覚過敏だった子どもが不登校になりました。私たちのようなこだわりのある人の生き方を、周囲にどう理解してもらえばいいでしょうか。(40代、ママ)

 前回もご紹介しましたが、大人になってから発達の特性が分かることがあります。保護者が子どもさんに発達の特性があることを見逃すのは珍しくありません。不注意や自分のルールに合わず(融通が利かず)どうしたら良いのか分からず固まってしまう子、など言動や行動が表立たない子どもさんは特に見逃されることが多いです。

また、学校の先生の中には、行動の目立つ子に目が向き、教室で静かに座っているけれども注意がこちらに向いていないなど、目立たないが大人が支援する必要のある子を見逃すことがあります。私は、そういう子どもさんにこそ注目してほしいと考えています。

編集室 今回の相談の方は、不注意や忘れ物が多いとのことですが。

 不注意の特性がある方は、物心がついた頃より忘れ物や人の話を聞いていないことを体験します。周囲に度々指摘される中で「忘れ物をしてはいけない」「きちんと話を聞いておかないといけない」と自覚をするようになります。

当然、ご自身でも工夫をして努力するのですが、その工夫そのものを忘れてしまうことが少なくないようです。自覚や努力をしているのに何度も同じ失敗をすることで自分は出来ないヒトと思ってしまい、周囲からも「なぜ、できないんだ!?」と言われ続けるうちに、努力することをあきらめてしまいます。私は外来で不注意の特性のある方の話を聞いていると、不注意の特性が及ぼす本人への影響は深刻ではないかと思います。

なので、もし子どもさんが注意しても忘れ物をしたり、話を聞いていないと感じたりすることが度々あったら、もしかしたら不注意の特性があるのではないかと振り返ってみてほしいです。そして、本人の努力だけに頼るのではなく、大人が一緒に考えていくことが必要になってくると思います。

相談者のお母さんは、自分の特性に応じたやり方を考えていることは、とても素晴らしいと思います。

編集室 次に、今回の相談にある子どもさんの感覚過敏についてですが、感覚過敏とは、どういうことなのでしょうか?

 音の感覚過敏(聴覚過敏)を例に挙げます。私たちの周囲には、人の声やTVの音、生活で生じる音、空調、外にいる人の声など、いろんな音に囲まれています。一般的には生活場面や状況に応じて、あまり意識することなく自分にとって必要な音を取捨選択して“聞いて”います。

聴覚過敏の特性のある方は音として通常には認識しない音、例えば蛍光灯やパソコンから出る音(皆さんも耳を澄ましてよーく意識すると聞こえます)なども音として勝手に認識されてしまうだけでなく、耳から入ってくる全ての音が同じ大きさで感じることも少なくありません。そのような中から必要な音を取捨選択して取り入れることは難しく、聞きたい相手の言葉と空調や外の音が同じような音量で“聞こえてしまう”、このような状態に生まれてから日夜さらされています。

他の感覚について過敏の特性がある方も、その過敏さと常に付き合っている訳です。

この感覚過敏は、好きなことをしている時やストレスが少ない状態だと、それほど過敏ではなくなるのですが、不安な状況にいるとさらに過敏になります。皆さんも怖いと思う場所やお化け屋敷では、いつもなら何でもない物音にビックリした経験、ありますよね?

家がリラックスできる環境であり、学校では子どもさんが安心して学校で過ごせる適切な配慮(例えば、聴覚過敏の子どもさんにノイズキャンセリング機能付きのイヤホンを使用するなど)がされれば、学校で過ごしやすくなります。しかし、家の居心地があまりよくないと過敏さが悪化し学校で過ごしにくくなる可能性があります。

ですから、子どもさんの不安が少ない状況、リラックスできる家庭環境を整える必要があります。そのための第一歩は、子どもがどのような特徴を持っているかを家族で理解し共有すること、そして特徴に合わせた工夫を考えたり、専門の施設で教わったりすることだと思います。

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