明橋 叱り方で悩んでおられる方は、たくさんおられます。もちろん叱り方も大切ですが、まず、ほめ方をご存知でしょうか?上手なほめ方を知るだけで、叱ることがぐっと減ります。
どんな子どもでも100%ほめるところが見つかる方法があるのでご紹介します。
①できないことではなく、できていることに注目する
親は、子どものできていないことに目がいきがちです。例えばテスト。まず×がついたところを見て、ここがダメと言ってしまい、〇だったところへのコメントがない。そうすると、子どもに伝わっているのは、ダメということばかり。でも60点なら6割が〇です。6割ほめて4割注意してフェアではないでしょうか。特に自信、やる気を失っている子には、できないところは置いておいて、できたところをほめていくようにします。
子どもが歯磨きしない、しても10秒ぐらいで終わる。そんな時「10秒しかやっていない!」と怒りたくなりますが、少なくともやろうとしたのだから、そこはほめるに値する。そんな風に考えてください。
②できて当たり前でなく、できなくて当たり前
「〇歳になったんだから、このくらいできて当然」と親は言いがちですが、子どもはまだまだ発展途上です。できることもあれば、できないこともある。子どものことを怒ってばかりと思う時、原因は一つ。子どもへの要求水準、期待値が高くなりすぎています。
もう一度、要求水準をぐっと下げ、できなくて当たり前と思ってください。「まだまだ〇歳なんだから、できなくても仕方ない」と思っていると、できている時に「おお、できている!」となります。
大人だって、子どもができたその日から完璧な親になった訳ではありません。特に初めての子育ては、すべてが不安だったはずです。例えば子どもが熱を出して病院に行き、医者に「なぜこんなになるまで放っておいた?親でしょ!」と言われたらどうでしょう。つらいですよね。逆に「子どもが1歳なら、親も子育て1年生。分からなくて当たり前。親も子どもと一緒に成長していきましょう」と言われれば、ほっとします。この思いは親も子も一緒です。
③比較するなら、以前のその子と
親は子どもを、よその子と比較してしまいます。ところが子どもは、それぞれ成長のスピードは違います。早熟な子もいれば、大器晩成型の子もいます。それぞれ得意、不得意もあります。現時点で比較しても意味がありません。
なので比較するなら、よその子ではなく、以前のその子としましょう。「去年の今頃はこんなだったなあ」と思い出すと、「この子なりにちょっとは成長しているな」と気付くことができます。
子育てで大切な子どもの「自己肯定感=自分は自分でいいんだという気持ち」を育てるために、一番有効で一番簡単な言葉があります。「ありがとう」です。
自己肯定感が低い子に「君のやってくれたことで助かったよ。ありがとう」と話すと、すごくうれしそうな顔をします。自分みたいな人間でも、ちょっとは人の役に立てた、自分がいる意味がちょっとはあったんだと思えるからです。「ありがとう」という言葉は、相手の存在価値を高める言葉。最高のほめ言葉なんです。
これらのことを実践するだけで、子どもは素直に話を聞いてくれるようになります。それでも、叱らないといけない時はあります。
次回は、叱る時のポイントをお話しします。
明橋 大二(あけはし・だいじ)
真生会富山病院心療内科部長、「子育てハッピーアドバイス」シリーズ著者
1959年、大阪府生まれ。 京都大学医学部卒業。 国立京都病院内科、名古屋大学医学部付属病院精神科、愛知県立城山病院をへて現職。
精神保健指定医、小学校スクールカウンセラー、高岡児童相談所嘱託医、NPO法人子どもの権利支援センターぱれっと理事長。専門は精神病理学、児童思春期精神医療。
【ひとコト】子どもによっては、新しい環境に慣れるのに時間がかかる子がいます。親からなかなか離れない子に「1年生なんだから、お兄ちゃんになったんだから、しっかりしなさい」とあまり言うと、より不安になってしまいます。
学校から帰ってきたら、子どもとしっかり話す、またスキンシップの時間を取ることで、がんばっている子どもの気持ちをしっかりと受け止めてあげてください。
明橋先生の新著「HSCの子育てハッピーアドバイス HSC=ひといちばい敏感な子」が、1万年堂出版から発売されました。イラストは、コノコトで4コマ漫画&エッセー「敏感さは宝物 ななとひよこママのHSC子育て」を執筆するイラストレーターの太田知子さん。親の皆さんに向けて、HSCの知識と、子育てのスキルをまとめた「マンガで分かる」HSC解説本です。四六判、232ページ、1,296円(税込)。
【関連連載】敏感さは宝物 ななとひよこママのHSC子育て
500万部を突破している「子育てハッピーアドバイス」(明橋大二真生会富山病院医師ら著、1万年堂出版)シリーズのイラストをはじめ、子どもを描いたかわいいイラストが人気の太田さん。プライベートでは、ちょっと敏感な心と体を持つ二人の子どものママでもあります。日々の子育ての様子を楽しい4コマ漫画とエッセーでお伝えします。