質問 心に残っている親の言葉、親の姿があれば教えてください。

坪田 高校時代に留学していたニュージーランドから一時帰国し、アメリカの大学に行く前に日本で運転免許を取ったんですね。親の車を借りて友達と初めてドライブに行こうとした時に母が言った一言が衝撃的でした。
「ひいても逃げちゃだめだよ」。
「普通は気をつけてね、とか事故起こさないようにね、でしょ?」って言ったら、母は「誰もひこうと思ってひく人はいない。事故が起きた時に逃げちゃだめなんだよ」と言ったんです。
これは僕の今の人生観にもつながっています。誰でも人はミスや失敗をするもの。その時にどう対処するかが重要だと教えられたんですね。
僕も自分の子どもにはそう教えたいと思いました。
「頑張ってね」「受かるといいね」は当たり前。もしうまくいかなかった時でも、すぐ次に向けて頑張ろうと思える気持ちになれるような言葉がけのほうが大事なのだと思います。

僕が小学校1年生の時に両親が離婚していたので、父のことはほとんど覚えていません。ですから母が父代わり、祖母が母代わりという感じでした。祖母がアメリカに行く前に言ってくれたのが「嫌になったらすぐ逃げて帰ってきていいんだからね」。その一言で僕はすごく安心しました。行く以上は成功しなければいけないと思うとプレッシャーだし、もしうまくいかなかったら顔を合わせられないと思ってしまう。「失敗しても、親だけは絶対に味方だから大丈夫」と思えれば、人は頑張れるし、生きていける。自分も教え子や部下に対して安心感を与えられる存在でありたいですね。

編集室 子育てをしている読者の皆さんへメッセージをお願いします。

坪田 親が子どもに望んでいることを親自身が実現したほうがいいと思います。夢を持ちなさいと子どもに言うけれど、あなたの夢は何ですか?ということ。子どもは親の言うことは聞かないが、親のまねはします。親が「私も昔やってたのよ」ではなく、現在進行形で自分の夢を実現させようと努力し、その姿が格好良かったら子どもは「すごいな。自分も頑張ろう」と思います。(おわり)

 


坪田信貴(つぼた・のぶたか)

坪田塾塾長。累計120万部突破の書籍『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(通称ビリギャル)や累計10万部突破の書籍『人間は9タイプ』の著者。
心理学を駆使した学習法により、多くの生徒の偏差値を短期間で急激に上げることで定評がある。大企業の人材育成コンサルタント等もつとめ、起業家・経営者としての顔も持つ。新著に『どんな人でも頭が良くなる 世界に一つだけの勉強法』がある。
4歳と0歳の娘のパパ、東京都在住。
新刊に「才能の正体」(NewsPicks Book)がある。