ささいなことでも刺激となってしまうHSC(ひといちばい敏感な子)にとって、新生活が始まる春は、ストレスの多い季節です。
ようやく慣れてきた先生も変わり、今までクラスの中にあった自分の居場所も、また一から作り直さなければなりません。
何より敏感な子にとって、「初めて」という体験は、非常に大きな刺激になるので、それがたとえどんなに楽しいことでも、とても疲れてしまうのです。
外から見たら楽しそうに見えても、家族に八つ当たりして、親子でバトルになってしまうこともあるかもしれません。
そんなときに、敏感な性質を知っていると、必要以上に無理することなく、子どもを傷つけずに対応できることもあると思います。
 
保育園生のHSCは、新しいクラスになじむのに、とても時間がかかることがあります。
うちの長女がそのタイプでした。
周りの子はもうすっかり慣れて、新しい友達もでき、いろいろな行事を楽しそうに過ごしている中で、長女だけは、いつまでたってもイヤイヤ登園でした。毎日、刺激で飽和状態だったのだと思います。
親は先が見えずに不安になってしまうと思いますが、「この子にはこの子のペースがある。それでいいのだ」と考えると、少し楽になります。
他の子とペースが違っても、それは悪いことではありませんし、娘は今、高校生になりましたが、HSCの自覚があるので、自分で対処できています。

小学生のHSCは、小さい子のように、だだをこねたくない、強くなりたい、成長したい、と自分でも思っているので、キャパシティーの限界までがんばることが増えてきます。
でも、刺激を受けやすいことには変わりないので、見た目にはそうは見えなくても、相当無理をしていることもあります。
学校というところは、声の大きい子や、乱暴な子、いろいろな子がいて、そんなところに一日中いることは、HSCにとって、相当心が疲弊することです。強い子には気を遣わなければいけないし、先生からは注意されないように緊張でガチガチです(HSCにとって、先生から叱られる、という行為は、恥ずかしくて、倒れてしまうほどのダメージなのです)。
また、悪口やいじわるには、とても心を痛めています。
一日過ごしたら、立ち上がれないほどクタクタになって当然なのです。

だから、みんなと同じようにできて当たり前、という思いは、親としてはどうしても出てきてしまうのですが、それでも一旦脇に置いておいて、「疲れて当然だよ」「ゆっくり休んだらいいよ」「がんばってるね」と受け入れて、認めていくことで、子どもも、明日からまたがんばろうと元気が出てくるのだと思います。

一人一人、ペースは皆違います。遅いことは悪いことではありません。人とペースが違うことは、その子が劣っているということではありません。
お父さんお母さんも、その点は安心していただきたいです。

「刺激」という字を改めて見ると、「激しく刺す」と書くんですね。

HSPの私から見たら、とてもうまく表されている言葉だなあと思います。

HSCにとって「刺激」は、突然、何者かによって、激しく刺されたようなものです。

今、我が子はそういう刺激を受けているんだ、と思うと、何だかいとおしくなってきて、優しく受け入れよう、という気持ちになってきませんか。

 

◆太田知子(おおた・ともこ)◆

1975年、東京都生まれ。主に子どものイラストを中心に描くイラストレーター。小学生と高校生の2児の母。
著書『子育てハッピーたいむ ななとひよこの楽しい毎日』1~3。『りんごちゃんと、おひさまの森のなかまたち』1~5。『HSC子育てあるある うちの子は ひといちばい敏感な子!』。