「芸術の都」と称されるパリで19世紀末から20世紀初めにかけて活躍した画家らの作品を展示した「ロートレックとベル・エポック PARISー1900年」展が9月16日まで、高岡市美術館で開かれています。フランス語で「美しき時代」を意味するベル・エポックに活躍した画家ロートレックやドガ、マネ、ミュシャらの作品を一堂に展示。コノコトの親子鑑賞会には年長児~中1の親子5組が参加し、同館主幹学芸員の宝田陽子さんの解説を聞きながら鑑賞を楽しみました。

宝田:この展覧会では、ベル・エポックの時代に活躍した作家145人の版画を中心に、327点を展示しています。

宝田:先日、パリ五輪の開会式があったばかりですが、見た人はいますか?
参加者:(ぱらぱらと手が上がる)
宝田:少なめですかね。今、テレビではパリの街並みが盛んに放映されていますが、今のようなパリの街ができたのは1900年頃にさかのぼります。万国博覧会が開かれ、外国から多くの人がパリに訪れたことで、カフェやホールなど楽しい場所ができ、街が生まれました。同時に、当時のうきうきとした雰囲気を表し、人々をパリに引きつけるような作品がどんどん出てきました。

宝田:今回の展示で最も多いのが、この作品を描いたロートレックという作家によるものです。「ディヴァン・ジャポネ」というこの作品。フランス語ですが、音を聞いて何か思い浮かぶことはありますか?
子どもたち:日本!
宝田:そうです。訳すと「日本の長椅子」という意味で、作品はその名を冠したカフェの宣伝ポスターなんです。当時はフランスで、日本の浮世絵などの美術が大きなブームになった後でした。とても遠い国の文化が届いたことにパリの人は感動し、感じた驚きを自分の作品に取り入れました。では、この作品の主役はどの人だと思いますか?
子どもたち:女の人・・・?
宝田:はい、手前の黒い服の女性に目がいきますよね。後ろのグレーの影は演奏をする人たち、その後ろに黒い手袋をしてステージに立つ歌手がいます。手前、真ん中、後ろの風景を描いた構図は、日本の浮世絵に見られる場面構成を参考にしていると考えられています。西洋の人がそれまで見てきたものとは違った表現で、当時の人々の注目を集めようとしているんです。今回の展示では、そのさまざまな工夫を見てほしいです。

宝田:このコーナーにはロートレックが描いた馬やサーカスの作品が集まっています。ロートレックはフランス南部出身の貴族でした。父親が軍の騎馬隊長だったこともあり、小さい頃から馬になじみがありました。しかし体が弱く、36歳の若さで亡くなっています。これらの作品は、今見ているサーカスの風景なのか、それとも思い出のサーカスの風景なのか、皆さんはどちらの印象を受けますか?
参加者:思い出の風景かな? 楽しかった部分を引き立てるように描かれている。
宝田:晩年、体調を崩して入院中、昔の楽しかったサーカスの記憶を思い出しながら描いたとされています。よく見ると客席に誰もおらず、少し不思議な感じがしますよね。この部屋のたくさんある風景の作品からは、ロートレックの心の様子も感じ取れます。

宝田:この時代は出版や本の販売が盛んになり、いろいろな作家の作品を集めた版画集が限定で売り出されました。今回は約100点のシリーズ版画を展示し、4作品ごとに飾ってありますが、同じ作家が描いたものはなかなかありません。変化の時代に生きた作家たちの挑戦心が表れた作品や、街の人々に寄り添った表現の作品が並んでいます。皆さんも、自分はどの作品が好きか、選んでみてください。
宝田:この中に、今もある商品のポスターがあるんですが、どれだと思いますか?
子どもたち:分からない…。
宝田:バンホーテンのココアのポスターです。当時、一般の人もココア飲料を好んで消費していたことが分かります。このポスターは「みんなに買ってほしい」という思いで描かれたんですね。

宝田:こちらのコーナーには1900年パリオリンピック前後のパリの街の様子を写した写真や、オリンピックのメダルとポスターの複製が飾られています。実際にこういった風景の中で多くの展示作品が作られたんだと、ぜひ見比べてみてください。

宝田:オリンピックのメダルというと、皆さんは丸いイメージがあると思いますが、1900年のパリ五輪ではメダルは四角だったんです。120年以上前にいろいろな国の人が集まる大会があったということも驚きですよね。

宝田:ここでは皆さんに、パリの風景や当時の雰囲気を存分に味わってもらいたいです。当時の作家たちが愛したパリの風景や、おしゃれをする人々、大都会パリで仕事をする人を丁寧に描いた作品もあります。

宝田:時間が迫ってきましたので、最後に一つだけ。実は、1900年前後のパリに、高岡市出身の林忠正という人物がいました。浮世絵などの日本美術を伝え、それまでパリでは見ることのできなかった日本の美術作品を紹介しました。そういう人が富山・高岡に生まれてパリに行っていたということをぜひ知っていただきたいです。では、この後は皆さんの時間が許す限り、当時のパリの雰囲気にひたってもらいたいと思います。写真も撮って大丈夫ですので、心の中に、カメラの中に収めてください。
・今もあるココアが120年以上前にポスターで描かれていたことが面白かった。色鮮やかな描き方を宿題のポスターの参考にしたい。(富山市、小2女子)
・当時の作品は、浮世絵などの日本美術から影響を受けていたと知り驚いた。パリは新婚旅行で行った地でもあるので、パリの街並みの写真から、旅行時の懐かしい記憶も思い出された。(富山市、ママ)
・印象に残ったのは「ディヴァン・ジャポネ」。よく見ると、いろんな絵が隠れていてすごいなと思った。(富山市、小3女子)
・ほとんどが線と色で描かれていた。現代の作品に比べれば、使われている色はずっと少ないのに、今見てもおしゃれな作品ばかりだった。(富山市、ママ)
・鑑賞会に参加したのは初めて。解説があると時代背景などが分かって、作品の見方も変わってくる。深く理解できて面白かった。(高岡市、ママ)
北日本新聞パス会員(無料)の5組に、ペア鑑賞券をプレゼントします。
■締め切り:2024年8月18日(日)
※応募多数の場合は抽選となります。商品発送は8月下旬ごろを予定し、当選は発送をもってかえさせていただきます。
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