人間と動物との暮らしに焦点を当てた展覧会「どうぶつ百景-江戸東京博物館コレクションより」が9月21日まで、富山県水墨美術館で開かれています。展示品は浮世絵や屏風、工芸品など多彩で、馬やウサギ、犬猫、鳥といった現代でも身近な動物がモチーフとなっています。8月下旬には「親子・ベビーカーウェルカムデー」があり、コノコトレポーターの親子も参加しました。学芸員の若松基さんから、子供と一緒に美術館を楽しむポイントや、作品の見どころを教わりながらアートに親しみました。
※紹介した作品の一部は展示替えのため、現在は見ることができません。

若松:展示室の中は涼しいですよね。外は暑いので最初は「気持ちいい」と感じるんですけど、ずっといると寒くなってきます。特に夏は、お子さんの分も羽織り物を1枚持ってくるといいですよ。富山県水墨美術館には授乳室や貸し出し用のベビーカーもあるので、ぜひ利用してください。
お子さんの機嫌が悪くなることもあります。チケットの半券を見せれば、展示室には何度でも出入りできます。館内は飲食禁止なので、水分補給をしたいときは授乳室を使ってください。

若松:展示と関係ないことを大声でしゃべったり、走り回ったりするのは、他のお客様に迷惑になりますが、作品の感想を小さな声で話すのはすごくいいことです。保護者の皆さんは自分が感じたことをぜひお子さんに語りかけてください。
何を話せばいいか分からないときは解説の中から、面白いと思ったポイントを紹介してあげましょう。お母さんやお父さんが楽しそうに話しかけてくれたら、子供にとってはハッピーな体験になります。美術館を「楽しい場所」と記憶できれば、知的好奇心が豊かに育つきっかけになると思います。

■「くらかけもく」 江戸時代

若松:江戸時代に、武士の子どもが乗馬を練習するために作られた木馬です。足をのせるためのスリッパのようなものがぶら下がっていますね。これは「あぶみ」という、馬に付ける道具です。これに足をのせて、馬にまたがる練習をしたんですね。この馬は少し口が開いていて、目は上の方向を見ています。どこを見ているのか気になりますね。

子供:口の中に歯がある。

若松:そう、細かいところまで再現されています。この時代に使われていた鞍や手綱が本物と同じように作られています。道具の扱いの練習にも使われたんでしょう。武士の子供全員が使っていたのではなく、大名の子供など特別な立場の人たちのためのものだったと思います。

■「名所めいしょ江戸えど百景ひゃっけい 内藤ないとう新宿しんじゅく」歌川広重/画 1857(安政4)年

若松:馬のお尻がはっきり見えています。「恥ずかしい」と馬は思っているかもしれません。元気に歩けるように、人間と同じようにわらじを履いています。優しいですよね。さて、道に点々と落ちてるものが見えますが、何だと思いますか?

参加者:…………うんち?

若松:そうです。この時代は道路に馬のうんちが落ちているのは当たり前のことでした。ちょっと嫌ですね。(笑)

左:■「家兎うさぎくらべ」 1873(明治6)年
右:■「とうせい名兎めいとぞろい」 1872~73(明治5~6)年頃

若松:いろんな模様のウサギが描かれています。すごくかわいいですね。昔は学校でウサギがよく飼われていましたが、今は暑さのため難しいそうです。動物病院の先生によると、ウサギは20度くらいの室温でないと元気に過ごせないのだそうです。
この表は明治時代に飼われていたウサギの中で「1番素敵なのはどれだろう」と競ったものです。横綱や大関を決める相撲の番付表みたいで、とても面白い資料です。

■「うずらかい屏風」びょうぶ 江戸後期

若松:自慢のウズラを持ち寄って見せ合っている場面です。下の段のかごはシンプルだけど、上の段はとても豪華ですよね。裕福な人は立派なかごを持ってきたんでしょう。人間は若い人もいるしお年寄りもいます。お坊さんも武士もいる。さまざまな年代や身分の人たちがウズラをめでるという平和な会ですね。当時はウズラをペットにするのが流行していました。

■「うぐいす台用だいよう 鳥籠とりかご外箱」そとばこ 1923(大正12)年7月15日製作

若松:ウグイスはどんな声で鳴くかな?

子供:ホーホケキョ!

若松:その通り。ウグイスのオスが求愛のために鳴く声で、その声の美しさを競い合うイベントがありました。そのときに使われたかごです。

最後に子供用のパンフレットをもらって解散しました。参加者は残りの展示をじっくり鑑賞していました。

【参加者の声】

・乗馬の練習をするために作られた木馬が面白かった。偉い人の子供しか使えないのに驚いた。(富山市、小3)
・日本では昔から動物を大切にしていたのが分かった。その様子が作品として残っているのがいいなと思った。(保護者)         
・江戸時代にいろいろな動物がいると知ることができた。描かれた動物の顔が今とは違っていた。(富山市、小3)
・動物がモチーフなこともあって、子供たちが興味を持って鑑賞していた。解説もとても分かりやすく、大人も楽しめた。(保護者)

■9月12日(金)10時半~、親子・ベビーカー ウェルカムデー
学芸員が美術館の楽しみ方や展示について説明します。親子連れはもちろん、祖父母とのご参加も大歓迎です。