富山市は「時の記念日」の毎年6月10日、正午を告げる「ドン花火」を神通川河川敷で打ち上げている。市によると、この日に花火で時を知らせるのは全国的にも珍しいという。その歩みをたどると、市民や関わる人たちの愛着があってこそ、今に伝わることが見えてきた。
※2024年5月公開の記事を再掲します。記事中の情報は掲載当時のものです

1963年の「時の記念日」に打ち上げられたドン花火。当時の会場は富山城址公園だった(富山市郷土博物館所蔵)
ルーツは江戸時代の時鐘
ドン花火は、江戸時代に富山藩が時刻を知らせるためについた時鐘(ときのかね)を引き継いだ行事。富山藩では17世紀後半に、2代藩主の前田正甫(まさとし)が鐘を造らせた記録が残っており、富山市於保多町の於保多神社には、富山城の時鐘と伝わる鐘が残っている。2時間おきの鐘の音は親しまれ、売薬や神通川の船橋と共に「越中の三名物」と呼ばれたという。

富山城の時鐘と伝わる鐘=於保多神社
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