

みなとキッチンの説明をする大坪さん(右)
1日目
参加者はまず射水市の「みなとキッチン」へ。「富山オタクことちゃん」の愛称で知られる徳田琴絵さんの進行のもとオリエンテーションに臨みました。参加者は「ハンぎょボールが楽しみ。昨晩は枕を抱えて練習した」「ローカルプレイヤーからたくさん話を聞きたい」「富山県出身の友人よりも富山のことに詳しくなりたい」などツアーへの意気込みを語りました。

参加者は白エビの殻むき体験に四苦八苦
はじめに、氷見市を中心にモデル・タレントとして活動するしまえりなさんが、自身が主催者となって月に1回実施している、氷見市内を巡るツアーについて紹介しました。「ツアーや自分の活動をきっかけに氷見のファンが増えてきている。ここでしかできない体験を伝えたい」としまさんは豊富を話しました。能登半島地震の影響で客足が減った氷見市内の飲食店を応援する食事会イベントを実施したことも紹介しました。
次に登場したのは大坪史弥さん。会場となった魚食専門のシェアキッチン「みなとキッチン」のマネージャーとして、魚にまつわるワークショップや商品開発・販売を手掛けています。キッチンの立ち上げから携わる大坪さんは「いろんな人と協力して水産業を盛り上げたい」と意欲を語りました。能登半島地震で被災した飲食店に無償でシェアキッチンを提供するプロジェクトを始めたお話もありました。
参加者は大坪さんのレクチャーのもと、白エビの殻むきに挑戦。黙々と取り組み、「職人は2秒で殻をむけるのに、自分は1分もかかった」「今度から食べる時の印象が変わる」と感想を話しました。体験の合間には「日本のベニス」と呼ばれる新湊の名所・内川も見学しました。
昼食は、半世紀以上に渡り地元の人々に愛されている浪花鮨へ。ブリやカニの握り寿司に白エビの軍艦などの「富山湾鮨(※1)」に舌鼓を打ちました。
※1富山湾鮨:加盟している寿司店が、富山湾で獲れた旬の地魚、県産米のシャリを使ったすし10貫、富山らしい汁物を提供するというメニュー。富山に来た人だけが堪能できるぜいたくなお寿司です。

富山の海の幸をふんだんに使った富山湾鮨

ハンぎょボールであっという間に打ち解けました
午後は氷見市の久目地区交流館へ。バスの中ではしまさんが氷見の魅力や見どころを紹介しました。交流館ではゆるスポーツ「ハンぎょボール(※2)」の体験をしました。氷見で盛んなハンドボールが土台で、出世魚として知られるブリの縫いぐるみを脇に挟んでプレーするユニークなスポーツです。参加者からは「想像以上にハードだったけど体を動かすことができて楽しい」「ブリの縫いぐるみを脇に挟んだだけで、急に難しくなる」などと感想を寄せられました。参加者はほとんどが初対面で年齢もばらばら。それでも、ゴールが決まると、「出世~!」の掛け声を合い言葉にあっという間に打ち解けました。
※2ハンぎょボール:https://yurusports.com/sports/gotouchi/hangyoball

藤子不二雄Ⓐさんのモニュメントを案内するしまさん

駆け付けてくれた忍者ハットリくん
続いて氷見市街地に移動し、しまさんのアテンドでまち歩きを楽しみました。商店街に設置される同市出身の藤子不二雄Ⓐさんのオリジナルキャラクター「氷見のサカナ紳士録」のモニュメントについてユーモアを交えながら説明。「忍者ハットリくん」がサプライズで駆け付ける場面もあり、参加者は大盛り上がり。光禅寺そばにある元遊郭屋敷跡で、現在は演奏会や会議などで広く利用される「無盡蔵(むじんぞう)」では、オーナーの山田さんから建物をリニューアルした経緯を聞き、特徴ある建物内を見学しました。

民宿あおまさの魅力を話す青木さんと辻井さん
宿泊先は富山湾を眺望できる氷見市の民宿あおまさ。店主の辻井隆雄さんと女将の青木栄美子さん夫婦が青木さんの祖父から民宿を継いだ経緯を紹介しました。氷見は民宿を地域の会合や食事会に利用する習慣があり「氷見の民宿文化を守っていきたい」と辻井さん。1月の能登半島地震の際は備蓄していた米がなくなるまで、おにぎりを振る舞い続けたそう。「地元の方に支えられて民宿を続けられたので恩返しをしたい」と青木さん。「一般の観光客が気軽に来ていいのか心配」という質問には、「日帰り利用でも大丈夫。安心して来てほしい」と話しました。
1日を振り返るワークショップでは「地域の魅力を語るローカルプレイヤーたちは輝いている。活動を応援したい」「地域活性化に覚悟を持って取り組むには、補助金や制度面も理解することが重要」など、ローカルプレイヤーの活動に影響を受けた人が多いようでした。
海越しに立山連峰が夕陽に染まっているのを見て、日帰りコースの参加者は名残惜しそうにあおまさを離れました。

1日を振り返り発表する参加者
宿泊コースの参加者は民宿あおまさ自慢のサウナで海越しの立山連峰を見ながら“ととのう”体験をしたり、海の幸を堪能できる夕食を満喫したりしました。

参加者に彫刻をレクチャーする前川さん
2日目
2日目、一行は南砺市の井波木彫工芸館へ。案内役を務めたのは木彫師・前川大地さんです。「井波のように彫刻集団やチームがいる町は他にない」と井波と彫刻の関係を紹介しました。前川さんは井波彫刻の新しい在り方を模索するため、自身が理事を務める「一般社団法人ジソウラボ」では次世代を担う人材の発掘と育成支援をテーマにまちづくりに取り組んでいます。「彫刻の分野だけでなく、ゆくゆくは町のマスターピース(源泉となる人材)になってほしい」と話しました。
参加者は前川さんの指導を受けて彫刻でのコースター作りを体験しました。彫刻刀の扱いに四苦八苦しながら、材料のクスノキに思い思いの模様をあしらいました。「力が入ってしまい腕がパンパン」という声に、「慣れですよ」と前川さん。参加者は壮大な彫刻作品の一つ一つが熟練の職人技によって形作られることを学びました。
ジソウラボがきっかけでオープンしたお店を徳田さんが案内しました。コーヒーロースタリーに立ち寄る参加者は本格的な味わいを楽しみました。

瑞泉寺で前川さんに彫刻の解説を受けます
その後、フォトグラファーの大木賢さんが活動している「nando」で、井波彫刻の作品をVR(バーチャルリアリティ)の世界で鑑賞しました。専用のゴーグルを着けると「違う部屋に閉じ込められたみたい」と不思議な感覚になった参加者もいました。大木さんは「物理的な制約を受けずに無限に表現できるのがバーチャルの良さ。この先、VRは知識を得るために手段として使うのに有効になるだろう」と可能性を説明。参加者は「井波の町や職人と大木さんが交わることで、これまでにない化学反応が起こりそう」と今後の活動に期待を寄せました。

今回のツアーを締めくくるワークショップでは中山間地域の課題やそれぞれが取り組みたいアクションについて話し合いました。「内川のせせらぎ、コーヒーの匂い、彫刻の感触、おいしいすし、美しい景色はインターネット上では分からない価値が盛りだくさんで、五感を刺激された旅だった」「知ったことで家族や友人に紹介できる。今度は自分がガイドしたい」「もっと人々がコミュニケーションを取り、町づくりを共創していくことが大切だ」「『ここに行けばこの人に会える』ということを伝える観光ボランティアをしたい」などの意見が寄せられました。
中山間地域の課題に触れ、海と山の魅力を楽しむ2日間。「出世~!」という掛け声をもって旅は終了しました。

中山間地域の課題について発表する参加者

せーのっ「出世~!」