日本中央競馬会(JRA)の調教師である小林真也の転機は、大門町(現射水市)の実家から富山工業高等専門学校(現富山高等専門学校)に通って丸3年たった時だった。中退という選択を下し、競馬界へのあこがれを成就させようと、北海道の牧場に就職したのだ。このエピソードを知った時、とある有名漫画が記者の脳裏に浮かんだ。現在44歳の小林ならば、世代的に読んでいる可能性は十分にあると考え、直撃した。「『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』に影響を受けたか」――。
すごい漫画だと思います
「じゃじゃ馬グルーミン★UP!」は、週刊少年サンデーで1994年から2000年まで連載された。「究極超人あ〜る」や「機動警察パトレイバー」などで知られる漫画家、ゆうきまさみが手がけている。ストーリーは、都内の進学校に通う男子高校生が、バイクで北海道を一人旅していた際、競走馬生産牧場の一家と知り合い、その次女に一目ぼれする。長期休みのたびにバイトとして訪れるようになり、人や馬に魅了されたことで、高校を中退し、その牧場で働くようになるというものだ。
最終的に、主人公と次女が結婚するラブストーリーでもあった。当時、中高生だった小林にとって、さぞかし魅惑的な世界に映ったのだろうと邪推していたが、小林はその影響を「全くありません」と否定した。「漫画は知っています。牧場に入った後、誰かが読んでいるのを見ました。すごく面白かった。現場の生々しさが、くみ取られるように表現されていましたから。僕ら現場の人が書いたのではと思うほどの肌感覚で、すごい漫画だと思います」。恋愛模様でなく、物語のリアルさに感銘を受けていた。

ただただかわいかった
小林は1999年3月、北海道新冠町の早田牧場新冠支場に就職した。ネットが現在ほど充実していなかった当時、小林が道内のハローワークに電話で問い合わせたところ、牧場関連の求人はあまたあったという。その中で「最大手だったから」との理由で選んだ早田牧場は、94年のクラシック三冠馬、ナリタブライアンを輩出したことで知られていた。

99年5月、同牧場でパシフィカスという馬が死んだ。
