「画壇の三筆 熊谷守一・高村光太郎・中川一政の世界展」
県水墨美術館で 11月28日(日)まで

明治から昭和期にかけて画家や詩人として活動した3人の足跡をたどる「画壇の三筆 熊谷守一・高村光太郎・中川一政の世界展」が、11月28日(日)まで県水墨美術館で開かれています。

3人の書や絵画、陶芸、彫刻などを、前期・後期の会期合わせて約120点展示しています。それぞれの作品には、どのような特色があるのでしょうか?

今回は、親子10組が参加しました。学芸員の丸山多美子さんの解説を聞きながら、日本の美の世界へレッツゴー!

 

【高村光太郎さん】妻への熱いラブレター

丸山さん:まず「書は最後の芸術である」という言葉を残した高村光太郎さんの作品から紹介します。

妻の智恵子さんは、「智恵子抄」という詩集でも知られます。

夫婦はとても仲が良く、それを象徴するのが、「わがこころは今大風の如く君に向へり」と書かれた書です。

智恵子抄に収められた句で、「君」は智恵子さんのこと。ラブレターですね。

文字は細くて鋭く、抑揚があります。彫刻家としても活躍し、彫刻刀で作品を手掛けていたためでしょうか、書にも奥行きが感じられます。

丸山さん:続いて、木彫作品「蝉(せみ)」を見てください。

リアルですよね? でも、そこまで細かく彫っていないのです。粗く削っていても、羽や体の量感、構造を捉えているため存在感がある、ここがすごいところです。

【熊谷守一さん】自宅の庭に宇宙感じる

丸山さん:熊谷守一さんは、自分が好きなものや言葉を作品の題材に選んでいました。

会場には、葉っぱの上にのるカタツムリや、猫を描いた絵画が並んでいます。

熊谷さんは76歳の時に軽い脳卒中で倒れ、それから亡くなるまでの約20年間、自宅から出ることができなくなりました。

そのため、ずっと過ごしている自宅の庭を「小宇宙」と称して、さまざまな生き物をじっくり観察し、生き生きと表現しました。絵本に出てきそうなきれいな色使いですね。

書も見てみましょう。「ほとけさま」と、したためた作品があります。

自分の心にすっと入った言葉なのでしょう。優しい雰囲気で素敵ですよね。

【中川一政さん】雨でもカッパ着て創作

丸山さん:最後は、中川一政さんの書、絵画を紹介します。

書の「正念場」は、何歳のころの作品だと思いますか? 亡くなる年、97歳のときです。

エネルギッシュな文字ですね。いつも緊張感を持って創作活動に臨んでいたことが伝わります。

中川さんは富山と縁があります。戦争中、高岡市に疎開していました。さらに、「源」のますずしのパッケージ原画も手掛けたんです!

参加者:え~!

丸山さん:絵画を描く姿勢にも、特徴があります。

一般的には風景を描く時には、スケッチしたり写真を撮ったりした後、アトリエや自宅で仕上げるのですが、中川さんは雨が降ってもカッパを着て、その場で描き上げました。

そのため、生々しい感情が作品に反映されています。

有名な作品は「鯛・大器晩成」です。タイは透明感ある色使いですね。

色がある景色、墨の濃淡だけで表現

常設展も見学し、学芸員の金山謡さんが案内してくれました。

金山さんは水墨画について「使うのは墨のみですが、濃くしたり、薄くしたりして、いろんな色が塗られているように表現します」と説明します。

そして、「この美術館は水墨画だけでなく、庭や茶室があります。さまざまな面から、日本の美しい文化を紹介しています」と話しました。

ちょっと苦い抹茶、慣れない正座にもトライ!

お茶席の体験は、「墨光庵」という茶室で行いました。数寄屋建築の第一人者、中村外二さん(小矢部市出身)が最晩年に手掛けました。

参加者は、抹茶と和菓子を味わいました。和菓子はリンゴ型で、展覧会で紹介されている高村光太郎さんの書「リンゴの歌」「リンゴばたけに」にちなんで作られました。

苦味ある抹茶の味や慣れない正座に少し戸惑い、緊張した様子の子どももいましたが、紅葉する木々を眺めながら、日本の伝統文化を堪能しました。

茶室を運営する県水墨美術館友の会スタッフに、作法を教わりました。例えば、抹茶を飲む前に、順番を待つ隣の人に向け、畳に両手をついて「お先に」とあいさつしました。

「墨光庵」座敷でのお茶席体験は、「画壇の三筆」の開催期間中、毎週日曜、午前11時~午後4時に行っています。一人600円で、抹茶と期間限定のオリジナル菓子が付いています。立礼席は土日祝日に利用できます。

参加した子どもたちの感想を紹介します。

小5男子…中川さんの「正念場」という書が印象に残りました。勢いがあり、見た人を勇気づけてくれると思います。

小4女子…高村さんの木彫作品が、リアルに見えて驚きました。熊谷さんの猫の絵は、寝ている姿がかわいかったです。

小5女子…お茶席体験で、窯から湯気が出ているところを初めて見ました。お菓子は種やへたまで再現され、本物のリンゴみたいでした。

小5女子…お茶席の体験は足がしびれたけど、気持ちが落ち着きました。昔の時代にタイムスリップしたようでした。

小3男子…庭の紅葉がきれいでした。鳥や動物がいる場面も見てみたいです。

 

【お出掛けメモ】 
「画壇の三筆 熊谷守一・高村光太郎・中川一政の世界展」
■会期…11月28日(日)まで
■会場…富山県水墨美術館(富山市五福777)
■TEL 076-431-3719
■開館時間…午前9時30分から午後6時(入館午後5時30分まで)
■休館日…月曜日
■観覧料…一般:1,200円、大学生:1,000円、高校生以下無料