「西洋絵画400年の旅―珠玉の東京富士美術館コレクション展」
富山県美術館で11月20日(日)まで
モネやルノワール、マグリットら、16~20世紀に活躍した画家の作品83点を集めた「西洋絵画400年の旅-珠玉の東京富士美術館コレクション展」が11月20日まで、富山県美術館で開かれています。

英雄やお姫様の肖像画、本物そっくりの風景画など、さまざまな作品が並ぶ中、今回は「子どもたちでも楽しめる、とっておきの鑑賞ポイント」を学芸員の稲塚展子(いなづか・ひろこ)さんに聞きました。
どこから見ても目が合う女の子の肖像画や、名画に隠れた昆虫たち…さあ、心弾むアートの旅へと出かけましょう!
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展覧会は2部構成。前半は「誰もが納得する理想的な美しさ、正しさ」を描いた歴史的な絵画が並びます。
よーく見ると血管が!
「ベッドフォード伯爵夫人 アン・カーの肖像」1639年

こちらは約400年前、イギリスで大人気だった宮廷画家の作品です。モデルの女性は、両親が服役中にロンドン塔で生まれたという数奇な運命の持ち主。その美貌で後に伯爵家に嫁ぎました。
この絵は彼女が20代半ば、新婚の頃に描かれたとみられます。「注目してほしいのは手です」と稲塚さん。よく目を凝らすと、うっすらと血管が透けています。「肌を透けるように白く描くことで、彼女の美しさを際立たせています」。なるほど、理想の姿を描いているというわけですね! これは会場で見ないと分からない発見です。
「ベルばら」ファン必見
「ルイ16世の妹 エリザベート王女」1782年

こちらはフランス国王ルイ16世の末の妹、エリザベート王女を描いた肖像画です。麦わら帽子に野の花が飾られていて、とてもおしゃれですね。当時流行していた髪型やファッションを知る手掛かりにもなります。
王女は生涯結婚せず、兄や王妃マリー・アントワネットと行動を共にし、フランス革命勃発後、断頭台の露と消えました…そう!漫画「ベルサイユのばら」の世界です。ちなみにこの絵の作者は、王妃お気に入りの女性宮廷画家として「ベルばら」にも登場しています。
どこから見ても目が合う!?
「シルクのソファー」1879年

次は愛らしい女の子の絵です。題名が示す通り、シルクのソファーの艶やかな質感が見事に伝わってきます。
「この絵は、どの角度から見ても女の子と目が合っているように感じられます」。なぜかは分からないというから不思議。絵の周りを歩いて試してみてください。
隠れた昆虫を探せ
「花と果物のある静物」1804年

前半最後にご紹介するのは、色とりどりの花と果物を精緻に表現した作品です。よーく見ると3種類の昆虫が描かれています。答えが何かは、ぜひ会場で探してみてくださいね。
「生き物が登場することで、途端に花や果物の甘い匂いが漂ってくるように感じませんか?」

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後半は、何をどう捉えて、どう描くか、画家それぞれの感受性が発揮されるようになった近現代の作品が並びます。今回は代表的な2点を紹介します。
顔がリンゴに!?
「観念」1966年

男性の顔がリンゴに置き換わっているこの作品。「シュール」の語源とされる芸術思想「シュールレアリスム」を代表する画家の一人、ルネ・マグリットが手掛けました。とっても奇妙なのに、なぜか心がひきつけられる作品です。
「想像を自由に膨らませて、日常ではありえない世界を描いています。自分ならリンゴの代わりに何を置くか、空想しながら見るのも楽しいかもしれませんね」
キラキラした光、どう描く?
「睡蓮」1908年

締めくくりは印象派の巨匠、クロード・モネの「睡蓮(すいれん)」です。
キャンバスを屋外に持ち出して描くのが一般的になったのは、チューブ入りの絵の具が登場した19世紀半ば以降のこと。この時代に活躍したモネは、睡蓮というモチーフを通して、戸外にあふれる自然の光、水面のきらめきを描こうとしました。
光という形のないものを、どうやって描けばいいのか…絵の具を混ぜて白っぽくする?
「モネの工夫はちょっと違います。原色に近い色を点や線でちょんちょんと画面に載せることで、キラキラした光を表現しました」。意識してみると、白や緑など比較的強い色が画面に散りばめられているのが分かりますよ。
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今回のアートの旅はここまで。稲塚さんは「西洋絵画400年の歴史をたどることができる展覧会。『小さな時間旅行』のつもりで、知らない国の昔の風景、昔の人々に会いに来てくださいね」と呼び掛けます。
芸術の秋、ぜひ親子でアートを楽しんでみてはいかがですか?
★ワークショップも
美術館3Fのアトリエ・ラボでは、同展の関連ワークショップ「ワクワクフレームをデコっちゃおう」も開催中。厚紙などを組み合わせてポストカードフレームを作ります。
参加無料で事前申し込み不要です(ただし各回定員20人まで)
開催時間などの詳細はコチラ>>>美術館HPへ

【おでかけメモ】
「西洋絵画400年の旅-珠玉の東京富士美術館コレクション展」
■会期…11月20日(日)まで
■会場…富山県美術館(富山市木場町3-20)
■TEL…076-431-2711
■開館時間…9:30~18:00(入館は17:30まで)
■休館日…水曜日
■観覧料…一般1400円、大学生1000円、高校生以下無料
■企画展HP…https://tad-toyama.jp/exhibition-event/16444