外来診療をしている中での苦い経験ですが、私自身まだゲームに関する対応が分からなかった頃、ゲームを巡ることで来院した母子がいらっしゃいました。私は親御さんの「ゲームを制限したい」という強い意向に沿い過ぎてしまい、子どもさんの意見を十分聞けず、課題が解決することなく来院しなくなってしまいました。今も非常に反省しています。

「健康であること」だけを条件に

その後も多くの子どもさんに会った様々な経験から、ゲームを巡って親子で約束事を決める場合、私からは「健康であること」だけを条件とするよう提案しています。つまり「子どもさんにとって最適な睡眠時間を確保すること」「食事をすること」「お風呂に入ること」の3つだけを、約束の条件にしています。

ゲームをやめやすいタイミングを知る

また親御さんには、ゲームの事を知らずに、子どものさまざまな事情を無視してゲームを規制するだけでは、何の解決にもならないと伝えています。

小学校低学年までなら、親御さんがゲームの時間を一方的に決めて、子どもに守らせる方法は有効かもしれません。ただ、それ以上の年齢になると、自己主張が出来るようになり、親御さんが一方的に規制するのが難しくなります。

また、オンライン上で友達とチームを組んで行うゲームの場合は友達とゲーム時間を決めることが多いため、小学校低学年でも機械的に「〇〇時で終了」という決め方では止められないことがあります。ゲームの内容によって、止めやすいタイミングがあることも知っておかなければいけません。
 

怒ってばかりだと 子どもが隠すように

「ゲームばかりして!!」と怒り、ゲームの内容も知らずに毛嫌いだけする態度ですと、子どもはゲームやネットでしていることを親に隠すようになります。ネット上での詐欺や危険な交際などに巻き込まれても、親に相談出来なくなるような事がないように、大人が心がけて、子どもさんを守る必要があります。
 

どんなゲームをしているか 内容を知ることから

子どものゲームのことで悩んだら、ゲームについて好きでなくて良いので否定はせずにゲームの内容を知る事が賢明です。親がゲームやネットについて知ろうとすると、子どもさんは話をしてくれます。どういう内容のゲームで、どういう友達とゲームをしているのか、その人とは会ったことがあるか、ネットで知り合ったのかなども分かってきて、ゲームをする時間について一緒に考えることができます。そうすれば、ゲームの内容を踏まえた現実的な約束を作ることができると思います。

ゲーム以外の約束もそうですが、子どもと約束する時には、とても大事なことがあります。それは「約束を守らなくても良い」ということを子どもが学習しないようにすることです。特に親御さんが守れない約束はしてはいけません。

ただし「約束を作ったのだから何が何でも絶対に守りなさい!」も有効ではありません。考えてみて下さい。大人の社会でも、約束したり計画したりしても、実現しないこと、成功しないことは多くあります。国の計画でも失敗は少なくないですよね。子どもなら、なおさらです。

子どもさんと約束をする際、おすすめしている方法を紹介します。


親御さんには普段からゲーム以外のことも含め、子どもさんとたくさん話をしてもらいたいと思っています。最近、ゲームのことでイライラしているなと思ったら、子どもさんとゲームとは関係のない世間話や馬鹿話をしているか振り返ってみていただければ幸いです。そのような会話ができる親子関係こそ、とても大切だと考えています。

子どものゲームやネットについて更にお知りになりたい方は、吉川徹先生(児童精神科医)の書籍「ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち 子どものこころの発達を知るシリーズ10」をおすすめします。
コノコトでも吉川先生の記事も紹介しています。

 


森 昭憲(もり・あきのり) 

 

県発達障害者支援センター「ほっぷ」センター長
富山県リハビリテーション病院・こども支援センター 小児科部長(児童精神)・精神科部長  心理療法科長

1970年生まれ。富山医科薬科大学(現富山大学)医学部医学科卒業。
内科、和漢診療を経て、精神科病院に勤務。あいち小児保健医療総合センター心療科、豊田市こども発達センター、愛知県立城山病院(児童精神・精神科)にて児童精神医学・発達障がい診療の研修。
2017年より富山県リハビリテーション病院・こども支援センターに勤務し、子どもの心の外来・精神科の診療を担当する。資格は精神科専門医・指導医、精神保健指定医