子どもの頃の自由研究

「ヤマネの研究」
 


皆さんは「ヤマネ」を知っていますか?お笑い芸人の「山根さん」ではありません。森にすむ、ネズミに似た小さな珍しい動物です。日本に生息するニホンヤマネには背中に一本のしま模様があり、冬になると身体を丸めて冬眠するのが特徴です。

小学生の頃は、動物と本(愛読書は『シートン動物記』)が大好きな、内気な女の子でした。そんな私にとって一番のアイドル的存在が、ヤマネだったのです。しかし、ヤマネを知っている友達や先生はまずいません。そこで小学5年生頃の自由研究で、その生態のおもしろさを、絵と文章でスケッチブックにまとめることにしたのです。


調べる方法は主に図書館の本です。特に参考にしたのが、ヤマネの研究者である湊秋作さんの本でした。なかには、天敵に襲われた時、トカゲのようにしっぽが切れるという衝撃の事実も書かれていました。挿絵は写真集を参考に色鉛筆で描き、小学生のための「ヤマネ本」が完成したのです。

ちなみにその後、ヤマネ大好きな様子を見かねた両親が、湊さんが館長を務める清里高原の「やまねミュージアム」に連れて行ってくれ、本物のヤマネと感動のご対面を果たすことになります。小さくてふさふさしたヤマネの可愛さといったら!


今、私は美術館で作品のおもしろさを紹介する仕事をしながら、休日は観たい展覧会のために全国問わず出かけています。対象こそ美術になりましたが、好きなことを追究している意味では小学生の頃と変わりません。その楽しさは、ヤマネのつぶらな瞳が教えてくれたのかもしれませんね。

 


おススメテーマ

「東京五輪で注目!ピクトグラムを採集しよう!」
 


ここでは、トイレや非常口のマークなど、身近な生活の中にある「ピクトグラム」をテーマにした自由研究を提案したいと思います。ピクトグラムとは、文字のかわりに絵を用いて意味を伝える「絵文字」のこと。言語の壁を越えて、多くの人のコミュニケーションを手助けするためのデザインなのです。

日本でピクトグラムが広まったのは、東京オリンピックや大阪万博などの大規模な国際的イベントがきっかけだと言われています。日本を訪れる外国人観光客が増え、2020年には東京オリンピックをひかえた今、その役割に改めて注目してみてはいかがでしょうか。


いろいろなピクトグラム(富山県美術館)
 

エスカレーターのピクトグラム(富山県美術館)
 

たとえば、次のようなテーマで調べてみてはいかがでしょう。(下に行くほど上級者向け)

  • 街中で見つけたピクトグラムを絵に描いたり写真に撮ったりして、オリジナルの図鑑をつくってみよう。どこで使われていて、どんな意味を表していますか。
  • いろいろな場所の「トイレ」のピクトグラムを集めてみよう。なかには変わった形のものがあるかもしれません。共通する特徴や、工夫しているところはどこでしょうか。
  • ひとつの施設(たとえば、ショッピングセンター、駅、美術館など)のなかに、どのようなピクトグラムが、どの場所に使われているか調べてみよう。施設によって違いや特徴はあるでしょうか。
  • 東京2020オリンピック・パラリンピックスポーツピクトグラムについて調べてみよう。各競技の、どのような特徴が表されているでしょうか。過去の大会のピクトグラムと比べても面白そうです。

ソウルで見かけたピクトグラム
 

ドイツで見かけたピクトグラム
 

 



富山県美術館学芸員
碓井 麻央


横浜市出身。慶應義塾大学大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了後、2015年より富山県美術館(旧富山県立近代美術館)学芸員。専門はフランス近代美術史。近現代美術やデザインの展覧会のほか、教育普及活動にも取り組んでいる。