化石を見た感動 今の原動力に
私は子供の頃、砂いじりが大好きでした。幼稚園でも家の庭でも遊び場の神社でも、いろんなところで砂いじりをしては幼稚園の先生や母親に「砂いじりをやめなさい」と言わていました。でも、どうしてもやめることができませんでした。
当時住んでいた家の庭は、海の砂と山の砂を混ぜて作ったようで、貝殻が出てくることもあれば、少し角張った砂が出てくることもありました。それが面白かった私は、貝殻や気に入った石ころをよく集めていました。
そうしていると、あるとき、あざやかな水色の小さな石ころを見つけました。それまで石ころは肌色や灰色、黒といった、地味な色のものばかりだと思っていた私はとても驚き、その石を宝物にしました。そんな私を見た父親は、使っていた万年筆の箱を「宝物箱」としてくれました。うれしくなった私は、どこに行くにもその宝物箱に大好きな石入れて出かけていたのを覚えています。

ある日、家族で海岸に潮干狩りに行きました。そうすると、そこでは庭の砂の中から見つかる貝殻よりもはるかに多くの種類の貝殻が見つかります。うれしくなった私は、たくさんの貝殻を拾って帰りました。
少し大きくなったとき、家族でキャンプに行き、帰りに「ちょっと変わった石」が出るところに連れて行ってもらいました。そこでは、家の近所には見られない灰色の石がたくさんあり、石を割ると貝殻が出てきました。「化石」と言うものを知らなかった私は、自分の大好きな貝殻と石が一緒になっていることに大変驚き、すぐに夢中になりました。この頃の感動が今でも私の体の中に残っていて、私を動かす原動力になっています。
おススメテーマ
富山の川・石ころ比べ
夏は子供の行動範囲が大きく変わる季節です。普段目にして、疑問に思っていることと、夏に目にしたものを比較し、何が違うのか、どうして違うのかを考えさせるには最高の季節です。 自由研究は、不相応に高度な知識を目指したものではなく、子供ならではの視点、子供ならではの手法で謎に迫ったりするものがよいでしょう。
周囲の大人は子供が、何を見て、何を感じ、何に疑問を持っているかをうまく感じ取り、その疑問に寄り添って共にアイディアを交換しつつ成長を見守ることが望ましいと思います。
私がお勧めするのは、川の石を使った自由研究です。河原の石を使った自由研究はいくらでも可能性があるので、ここですべてを紹介することは難しいのですが、例えば、川の石の種類を比べてみるのもいいでしょう。
富山県は、県丸ごと地質の宝庫です。めまぐるしく地質が変わるので、川ごとに石の構成が変わります。川の石を選り好みせずに(ランダムに)集め、ここにしかない石、他の川にもある石といった具合に観察していくと、大まかに上流の地質を知ることができます。

私は、理科の神髄の一つは「観察して比較する」ことにあると思います。比較した結果の原因を考えることが研究です。また、こういった自由研究で最も大切なのは、「好きなもの・不思議なもの」を見つけることです。好きなことを追求する夏にしましょう。
石ころはどんなに小さなものでも地球のカケラであり、私たち人類よりはるかに古い歴史を持っています。

朝日町教育委員会学芸員
久保 貴志
広島県生まれ。石に興味を持ったのは母の証言から2歳頃。私の記憶では4歳頃には砂いじりをしながら気に入った貝や石ころを集めていた。6歳頃に化石と出会い、それ以降生命や地球の歴史のことばかり考える人生を送っている。