9月7~8日に実施する「うみとやまローカルラボ2024ツアー夏編」で会いに行くローカルプレイヤーを紹介します。

TEF DESIGN FACTORY 代表
伊東 将太さん

 

まちのシンボルである剱岳(標高2,999m)が圧倒的な存在感を放つ上市町。日常の中に、立山連峰の雄大な山々がある。そんな上市町を拠点にデザインの力を通して地域の魅力を再発見するきっかけづくりに取り組む、伊東将太さんにお話を聞きました。

ーデザインを通してどのような活動をしているのですか?

グラフィックデザインとイラストレーションを軸に、主にチラシやポスターなどの印刷媒体やウェブサイトの制作を行っています。また、イベント企画のサポートといった、デザインを幅広く活用した取り組みをすることも多いです。コンセプトの設計から場所の選定、展示物や告知物の作成などをトータルでお手伝いすることもあります。

地域の方からの「こんなことがやりたいけど、どう進めればいいのか…」という相談にも、グラフィックデザイン領域に制限せずに自分ができることで協力しています。

上市町での活動が多いですが、最近は県内の他の地域の取り組みも増えてきました。お手伝いができる地域を広げていきたいと思っています。

伊東さんが手掛けたポスター

ー伊東さんは東京で暮らしていた時期もあるそうですね。富山に戻ってからの活動はどのようにスタートしたのですか?

仕事のご縁があって東京で暮らしていたことがありましたが、思うように活動できずに半年ほどで富山に帰ってきました。東京での失敗があったからこそ、より自分の暮らす生活圏を楽しくしたいと考えるようになりました。

地域に貢献していきたいと考えて、町役場にたくさんの企画を持ち込んだこともありました。今振り返ると恥ずかしくなるような内容だったかもしれませんが、これをきっかけに地域の人たちとの接点ができて地域での活動や仕事へと輪が広がっていきました。

 

ー富山に戻ったことで活動に変化はありましたか?

地域のなかで積極的に関わりをつくるようになりました。久しぶりに会った友人と話した時に「上市は何もないからつまらない」と言っていたのを聞いて、「なんてつまらないことを言うんだ。本当に何もなくてつまらないかどうか確かめてやろう」という気持ちに駆られました。

でも、ひとりでできることもあればできないこともあります。そんな時に役場の方から「観光キャッチフレーズの選考委員をやりませんか?」と声をかけてもらい、その時に集まったメンバーを中心に立ち上げたのが現在も活動を共にしている「e'conte」という地元有志の団体です。

地元の人が地元をもっと好きになるようなイベントなどを企画する中で、何もないはずのところに特別な物語が生まれるという瞬間をたくさん体験しました。

 

ー地域での活動の中でのエピソードを教えてください。

印象的なのは2016年からe'conteでスタートさせた鯉のぼりの企画です。約120本の民家の物置きに眠っていた鯉のぼりや、子どもたちの手形でつくった鯉のぼりを休校中の小学校のグラウンドに泳がせるという企画です。

この企画を何年か続けていると「まちなかでもやりたい」という声が挙がり、上市駅の構内に鯉のぼりを飾り、地下道には“鯉のぼりの水族館”と題して町の保育園や福祉施設と一緒につくった塗り絵や折り紙を飾りました。普段は閑散としている地下道ですが、親子連れやいろんな町の人たちで賑わい、まさに水族館のような光景でした。

日常の風景が違う風景に変わることを体験してもらうことができて「こういうことをやりたかったんだよな」と実感した企画でした。

 

ーこれから取り組んでいきたいことは?

自分たちはもちろん、地域の人たちにもいろんなことを小さく試してみてもらうことで、生活圏に“新たなおもしろさ”を見出していきたいです。

2020年から古民家を改修して「パルプンテ」と名付けた交流拠点を運営しています。パルプンテは「ドラゴンクエスト」の呪文です。モンスターを一瞬で全滅させられるかもしれないし、こちら側が全員眠ってしまうかもしれないという予測不能な呪文なんです。いろんな挑戦をしてみるための実験室として使ってもらえたらと思っています。

実際に、お花屋さんが町に店舗をつくる前にポップアップ出店してくれたり、写真家志望の高校生が初めての個展会場として使ってくれたり、地元の作家さんがワークショップを不定期で開催してくれたり、多様な活動が生まれています。挑戦のきっかけや、日常が楽しくなるような交流拠点になればいいなと思っています。

 
profile  いとう・しょうた
上市町生まれ。2009年にグラフィックデザインの総合デザイン事務所TEF DESIGN FACTORYを創業。イラストレーションとポスター・チラシなどの広告物全般、ロゴデザイン、パッケージデザイン、WEBデザインなど、企画段階から寄り添う。13年から町出身者の有志で活動する団体「e'conte(エコンテ)」や商工会青年部などに所属し、地域のイベントづくりにも積極的に取り組む。
文・徳田琴絵(うみとやまローカルラボ ツアーコーディネーター・富山オタクことちゃん)
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富山オタクことちゃんの編集後記
このイラストは伊東さんに以前描いてもらった私の似顔絵です。


“富山オタクことちゃん”を似顔絵だけでなく雷鳥や立山連峰を加えることで、よりその人らしさを垣間見させる伊東さんの視点と工夫に、心を動かすデザインの力を感じました。大好評でいろんな場面で愛用しています!うみとやまローカルラボでは、伊東さんと上市のまちあるきを実施予定です。今まで気付かなかった地域のおもしろさを一緒に見つけてみましょう。
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9月7日(土)~8日(日)実施の『うみとやまローカルラボ2024』夏編では、立山町・上市町で地域活性に取り組む“ローカルプレイヤー”の皆さんに会いに行く学びの旅を開催します。皆さんのご参加をお待ちしております。
お申込みはこちらから(8月26日まで) ※終了しました。