9月7~8日に実施する「うみとやまローカルラボ2024ツアー夏編」で会いに行くローカルプレイヤーを紹介します。
TODO スペースコミュニケーションディレクター
柴草 朋美さん

未来における新しい現象を生み出すことに挑戦するアートユニット「TODO」。和紙や植物などの自然の産物を用いてアートを創出し、人びとに何かを感じさせるような空間コミュニケーションアートの提案に取り組む、柴草朋美さんにお話を聞きました。
ー長年にわたって和紙職人として活躍中の川原隆邦さんとのアートユニット結成のきっかけは?
2021年10月に、所属しているコミュニティの企画で川原製作所の工房を訪ねたことがきっかけでした。当時、広告代理店のディレクターとして“表現”と向き合っていた私にとって、川原さんの表現者としての姿勢が大きな学びになりました。和紙の原材料の楮(こうぞ)の畑を耕すところから作品づくりに取り組み、世界へと挑み続ける川原さんの生き方そのものが魅力的でした。
ちょうど自分自身の“表現”を見つめ直している時期でもあったので「川原さんと一緒に活動してみたい」という気持ちに突き動かされてそのままフリーランスへ転身し、川原さんのもとで和紙づくりを学び始めました。川原さんも新しい作品づくりを模索しているなかで私の熱い気持ちを受け入れてくれて、2022年5月からTODOとしての作品づくりが始まりました。

ーユニットを結成するにあたって柴草さんが新たに名付けた「スペースコミュニケーションディレクター」の肩書への思いと役割を教えてください。
“スペース”にはいろんな解釈があります。人との距離感や会話の間など、人と人のコミュニケーションが生まれる空間づくりをイメージしています。より良い空間やコミュニケーションをつくるために“スペース”をどう調和していくかという問いを立て、間口を広げてフラットな目線でものづくりを共有し、創作におけるコミュニケーションを活性化できればと思っています。
川原さんはアーティストとしての積み重ねを、私はコミュニケーションを生かした表現への展開を、というお互いの取り組みを掛け合わせて新しい作品を世に送り出していきたいです。

ーTODOとしてどんな活動をしているのですか?
1年目は川原さんの和紙づくりをベースに活動しました。地元の市場から譲り受けた廃棄野菜を和紙に漉き込み、資源の循環を表現した「野菜の茶室」をつくり東京ビエンナーレに出展したり、フランスで開催された和食のイベントで紙漉きのワークショップや展示を行ったりと、TODOとしての実績づくりに取り組みました。
2年目は私も個展を開催するなど個々の力を高めるための時間を過ごしながらも、新しい挑戦として金属加工業の株式会社シンコー(富山市)さんと一緒に「みらい工芸部」を立ち上げ、和紙と金属を融合した作品づくりや展示イベントを通してものづくりを発信しました。今年で3年目になり、それぞれの動き方の違いから生まれる活動の幅の広がりを感じています。

ーユニットならではの発見や相乗効果が生まれているのですね。これからの展望は?
実は結成当初からユニットでの活動期間をまずは3年間にしようと話していたので、今年が区切りの1年になります。3年間のなかで「ニューヨークで展示をする」というTODOとしてのひとつの目標があります。今、まさにその目標に向けて動いているところです。
ニューヨークでの展示が叶った後の展開はまだ分かりません。はっきりと決めていないことも私たちらしい創作の形だと思っています。川原さんとのユニット活動を通して柔軟性や行動力が高まり、自信も身につきました。私もだれかの背中を押すことのできるような、エールになるような創作活動を続けていきたいです。

富山市生まれ。広告代理店のディレクター業を経てフリーランスに転身。富山市内のコワーキングスペース「トトン」のコミュニケーターを務めながら、蛭谷和紙唯一の継承者である川原隆邦氏のもとで和紙づくりを習う。2022年5月に川原氏とのアートユニット「TODO(トド)」を結成。和紙の作品づくりや、創作におけるコミュニケーションのデザインに取り組む。
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富山オタクことちゃんの編集後記
柴草さんが川原さんとの出会いを経て大胆に挑戦していく姿や、目を輝かせながら活動について話す姿を見ていて、日々背中を押してもらっています。昨年開催された柴草さんの個展「Ten.」に伺った際に、作品を通してコミュニケーションのきっかけが生まれる工夫が仕掛けられていて“コミュニケーション”こそが柴草さんらしい表現の力なんだなと感じました。

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9月7日(土)~8日(日)実施の『うみとやまローカルラボ2024』夏編では、立山町・上市町で地域活性に取り組む“ローカルプレイヤー”の皆さんに会いに行く学びの旅を開催します。皆さんのご参加をお待ちしております。