
―会社の沿革を伺いたい。
1946年、高岡市末広町に出店した高岡書店(令和5年まで営業)が前身。55年に株式会社になった。父が社長に就任した80年代はロードサイドに大型書店や「おもちゃのバンビ」を出店。玩具や雑貨の販売、CD・DVDレンタル業をスタートさせた。90年代以降は輸入雑貨や化粧品の販売、中古本や中古ゴルフ用品の買い取り・販売、カフェなどを展開し、事業の複合化を進めてきた。私は2018年に社長に就任し、8年目になる。
現在は屋号を掲げた文苑堂書店(県内5店舗)と、FC加盟のTSUTAYA BOOKSTORE(県内2店舗)の2つのチャネルがある。文苑堂書店は地域に根ざした本屋として、TSUTAYA BOOKSTOREは全国のトレンドを意識した商品を扱う大型複合店として展開している。
―昨年10月、小杉町店を大規模リニューアルした。
3年前、文苑堂小杉店をTSUTAYA BOOKSTORE 小杉町店にリニューアルしたが、昨年さらに韓国食品を扱う「韓ビニ」、ブランド品など古物買い取りの「買取大吉」、スマホ修理を担う「スマホ修理王」をFC店として開設した。これまでは本を中心に扱うことで富山の皆さまに知性、教養、感動を提供してきたが、今は時代ニーズに合った商品サービスを複合的に提供していくことが重要だと考えている。
「韓ビニ」やネイルサロンも
―「韓ビニ」は若年層を中心に高い人気を集めている。
先発店を視察し、韓国の食のトレンドを提供する絶好のチャンスだと感じた。近年、アイドルや映画など韓国のエンターテイメントは世界的人気を博しており、そこから発信されるライフスタイルやトレンドは単なるブームではなく、定番化したものだと実感し、出店することを決めた。

―メディアの多様化やデジタル化による紙離れ、書店離れが進んでいる。
非常に危惧している。当社も2023年から自社アプリによるオンライン購入を稼働させているが、実店舗としての本屋はなくしてはいけない。1軒でも多く残すべき。そのため、当社では複合アイテムをそろえ、本屋に来る機会、本に触れる機会を提供している。「韓ビニに行ったついでにベストセラーを買った」「コーヒーを飲みに行った帰りに面白そうなビジネス書を見つけた」というふうになればいいと思っている。
―本に触れる魅力は。
本屋に行き、自分が思ってもいないところに反応することが大事だと思っている。ネットで物を買ったり検索したりする行為は、顕在化したニーズから発生するもので、興味のない分野は最初から排除している。それでは関心事がどんどん狭くなってしまう。
一方、本屋では何気なく手に取ってしまう本がある。それはその人の可能性であり、知見を深めるきっかけになる。私自身、小説を買いにいったつもりが、ふと目に留まったビジネス書を買い、多大な影響を受けたことがある。目に留まるということは、身体のどこかで潜在的に求めているものだということ。それは人生を変える1冊になるかもしれない。普段、意識していないものに出会う瞬間は大事。そういう意味で、本屋は重要な役割を担っている。
―経営者として大切にしていることは。
父も私も京セラ創業者である稲盛和夫氏の経営塾「盛和塾富山」に通った。世の中のため、人のために人間性を磨くことが経営を良くし、企業を成長させるということを深く学んだ。これからも富山の生活文化向上のため、「知性が育まれ、感性が磨かれる場」を提供していきたい。
現在330名いる従業員に対しては「何が大事か」ということを常に考えるよう促している。マーケットが縮小している今、もうかるかどうかという考え方では企業は存続できない。お客さまのためにどのように役に立ちたいのか、何が提案できるか、そのために自分たちにしかできないことを考え、実行していくことが重要だと伝えている。
―今年はどんな1年に。
事業の複合化をさらに推し進め、モノを売るだけでなく、コトを提供する本屋へ進化させていきたい。小杉町店、藤の木店では化粧品売り場にネイルサロンを新設し、「きれいになるコト」を提供している。今後リニューアルする店舗についても居心地の良いカフェを整備し、そこに居るコトが楽しくなるような空間をつくっていきたいと考えている。
昨年、仕事でロサンゼルスを訪れ、無人タクシーやウーバーロボットが街中に浸透していて、DXの進展に驚いた。海外に行き、見たことのないものを見て現地の人と触れあうのは刺激になる。今年も時間を作って海外に出かけたい。

