「あの夏を取り戻せ」。11月29日~12月1日に甲子園球場で行われた野球大会のスローガンだ。新型コロナウイルスの影響で夏の大会が中止された2020年度の高校3年を対象にした大会に、富山県から高岡第一OBが出場した。この大会とは別に、元高校球児が参加する恒例の「マスターズ甲子園」が11月中旬、甲子園で開かれた。憧れの聖地に、同じく「あの夏」を特別な思いで過ごした1人の大学生の姿があった。

甲子園でプレーする選手をうらやましそうに見つめるボールボーイが、三塁ベンチ横に座っていた。高校3年時、「あの夏」に泣いた高岡高校OBで新潟大3年の野崎壯太さん(21)だ。

マスターズ甲子園に出場した県選抜チームは富山県内の各校OBら約50人でつくり、中には80代の姿もあった。このうち4人はコロナ禍を経験した21歳を迎える世代で、野崎さんもその一人、となるはずだった。
衝撃の事実…大会規則に涙
当初、野崎さんにも選抜チームへの声がかかっていた。憧れの舞台に向けて野崎さんも意気揚々だったが、試合の1カ月半前に出場できない事実が判明。試合規則では大学野球の現役選手は出場できず、新潟大硬式野球部所属の野崎さんはルールに抵触した。

試合に出られなくても、野崎さんはチームの一員として帯同する気持ちは変わらなかった。「声をかけてもらったせっかくの機会。自分から断る考えはなかった」と甲子園への思いを語る。選抜チームは熱意に応え、ボールボーイとして参加できるよう事務局に掛け合った。参加費や交通費の一部は母校の高岡高校野球部OBが支援してくれた。

試合当日、野崎さんはファールが飛ぶと