質問 子どもが怒りっぽく、きょうだいとも、私たち親ともすぐけんかになります。子どもの心のケアのため、できることを教えてください。

甘えてきたら、可能な範囲で受け入れる
不安があるようなら、率直に話し合う

子どもはストレスや不安があるとき、親に甘えたり、赤ちゃん返りをしたり、逆にわがままを言ったり、イライラして攻撃的になったりします。子どもが甘えてきたら、可能な範囲で受け入れましょう。不安があるようなら、心配事について率直に話し合うことで、子どもは落ち着くことがあります。

不安を表現できる方法を見つける

小学校低学年ぐらいまでは、自分の気持ちに気づくことができず、イライラしてしまうことがあります。それなにの大人が「なんでイライラしているの!」と怒ってしまうと、悪循環になってしまいます。 その場合は、不安や恐怖(コロナが怖い)など、子どもの気持ちを表現する方法を見つける手助けをしましょう。

例えば大人が「どうしたの?心配なの?」など声を掛けて気持ちを引き出すほかに、遊びやお絵かきなど、創造的な活動が役立つことがあります。

例えば東日本大震災の時、「津波ごっこ」という遊びが子どもたちの中で流行ったことがありました。大人たちは、「不謹慎な!」と怒ったりしたのですが、子どもは、そういう「ごっこ遊び」を通じて、自分の不安や恐怖をコントロールしようとすることがあります。それも回復に必要な手段なのです。

戦いごっこや、スポーツなどで、イライラを発散する場合もあります。またお絵描きなどでも、必ずしも明るい絵だけではなく、暗い絵や、黒一色の絵を描いたりすることもありますが、それも子どもの気持ちの表現の一つであり、そういう絵を描くことを通じて、自分の気持ちを吐き出している意味もあるのです。気持ちを表現することで、子どもは安心します。

子どものための新しい日課をつくる

休校が続いても、基本的にはそれまでのルーチンの日課は変えないようにしましょう。そして、日中家にいる時間が多いなら、子どもと相談して、新しい日課を作るといいです。それによってある程度、メリハリのある生活を維持することができます。

勉強の時間だけでなく、楽しめる活動の時間も用意しましょう。工作とか、外遊びの時間とか、(あまり人が密集しない公園などであれば、一日一回くらいの外出は差し支えありません)、ゲームの時間も、私はこういう時期、気分転換に必要な部分もあると思います。

くだらないことで笑い合う時間をもつ

気をつけたいのは「宿題をした?」「ゲームばかりして!」と子どもをあまり怒らないことです。子どもも気分転換が必要ですし、親も仕事に出ていれば、完全に子どもを管理することはできません。ただでさえお互い不安やイライラが蓄積しているわけですから、あまり子どもに多くを求めすぎると、お互いに疲れてきます。

一緒に過ごす時間くらい、今日一日あったことを聞いて、くだらないことで笑い合うような時間にぜひしてほしいと思います。

子どもを極力ひとりにしない

子どもを親や家族、また適切なケアをしている人のそばに置き、極力ひとりにしないようにしましょう。子どもが一人で留守番をしていることが続くと、子どもの表情が乏しくなっている、という心配な声も聞きます。もし子どもと離れなければならない場合は、電話やテレビ電話で1日2回は、連絡を取るようにしてください。

人と接する時間を持つ テレビ電話の活用も

人と接する時間を持つことが大切です。外出制限があり、なかなか人と会うことができない状況かもしれませんが、家族と一緒に過ごすことだけでも意味があります。直接会えなくても、テレビ電話を通じて会話するのも良いでしょう。

次回は、大人の心のケアについて聞きます。


明橋 大二(あけはし・だいじ)

真生会富山病院心療内科部長、「子育てハッピーアドバイス」シリーズ著者
1959年、大阪府生まれ。 京都大学医学部卒業。 国立京都病院内科、名古屋大学医学部付属病院精神科、愛知県立城山病院をへて現職。
精神保健指定医、小学校スクールカウンセラー、高岡児童相談所嘱託医、NPO法人子どもの権利支援センターぱれっと理事長。専門は精神病理学、児童思春期精神医療。