富山県内の企業で正社員として働いていた女性の夫。食欲旺盛で元気な人でした。新型コロナに感染したときは、発熱や咳があったものの、「風邪のような感じ」で重症化することもなく、かかりつけ医を受診後、自宅療養し職場復帰しました。

仕事行けず解雇

ところが復帰後まもなく、夫は体のしびれやめまい、頭痛を訴えるようになりました。女性が付き添い、かかりつけの内科を皮切りに、耳鼻咽喉科や脳神経内科など県内外の病院をめぐって検査や治療を受けました。漢方薬を含め、さまざまな薬を処方されましたが、症状が良くなることはありませんでした。

※写真はイメージです(写真提供:photoAC)

感染から半年以上が過ぎた今も、夫は起き上がれない状態が続いているといいます。勤務先は規定の休職期間の後、解雇となってしまいました。大黒柱だった夫の収入がなくなったうえに医療費もかさみ、家計は苦しくなる一方です。

全ての人に起こる可能性あり

女性の夫が苦しむ罹患後症状(いわゆる後遺症)とは何でしょうか。

WHO(世界保健機関)は「新型コロナに罹患した人にみられ、少なくとも2カ月以上持続し、また他の疾患による症状として説明がつかないもの、通常は発症から3カ月たった時点にもみられる」と定義しています。

症状は「疲労感・倦怠感」「関節痛」「咳」「記憶障害」など多岐にわたり、東京都福祉保健局によれば、若い世代や基礎疾患のない人も無縁ではなく、コロナに罹患した全ての人に起こる可能性があります。

※厚生労働省HPより

富山県内に後遺症専門外来なし

県内の厚生センターには後遺症についての相談が月数十件ほどあるといいます。富山県感染症対策課によると、現時点で県内には「後遺症専門外来」の看板を掲げている医療機関はありません。県は「罹患後症状については医学的に解明されていないことも多く、今は症状に合わせた治療を行うしかない」とし、国もかかりつけ医や地域の医療機関に相談してほしいと呼び掛けています。

女性は新聞やインターネットで懸命に情報を探し、治療してくれそうな病院を当たったといいます。

※写真はイメージです(写真提供:photoAC)

一方、東京都や神奈川県など患者数が多い自治体を中心に、「コロナ後遺症相談窓口」を設置したり、後遺症に対応する「一次医療機関」と一次で対応できない場合の「二次医療機関(大学病院など)」を指定したりと、行政が仕組みを整えているところもあります。

周囲の理解なくつらい

女性の家族は、夫のコロナ感染を機にそれまでの平穏な暮らしが一変してしまいました。女性は家計を支えるために働き、不安がる夫の通院に付き添い、子育てや家事に追われ、先が見えない日々に目の前が真っ暗になることがあるといいます。

「感染しても多くの人が回復して社会復帰していく中で、夫の状態について周囲の理解が得られないのもつらい」。女性は涙ながらに、後遺症に悩む人に寄り添った相談支援や医療体制を整えてほしいと訴えました。

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