「知りたいと思ったコト、ソレこそ研究!」
小学1年生の時、私が自由研究に選んだのは「あげはのかんさつ」でした。
家の庭に、パセリが植えてありました。
ある日、パセリの葉についている白いまあるい玉を発見しました。
なんだろうと、母に聞いたところ、アゲハ蝶の卵だということを知りました。
この卵からどうやって蝶になるのだろう?
知りたい!
観察日記のスタートです。(8月6日)
毎日、観察するのが楽しみになりました。
絵と文章で観察日記を書くことにしました。
観察から3日目にはふ化し、幼虫になっていました。
その時のことを、こう書いています。
「だいはっけんをしました。」(8月9日)
成長を見るのが楽しみで、明日が待ち遠しくなりました。
観察の最中に、私は入院することになりました。
困ったな。
えさのパセリと一緒に、虫かごの中に入れて病院に連れていくことにしました。
虫かごを、ベッドの下に内緒で隠して置こうと悪だくみを考えていましたが、正直に言うことにしました。すると、病院の先生は「いいよ」と言ってくれてホッとしました。
病院では、手術の日までヒマなので、思う存分、観察できました。
幼虫は、かなりの食いしん坊でした。
「みるみるうちにふとっちになりました」(8月24日)
どんどん食べるので、パセリの葉が丸坊主になってしまう。
母が病院に来てくれる時、新しい葉を持ってきてもらいセーフ。
だっぴをすることも知りました。
身体の色が変わりました。
「せなかのいろがくろいいろだったのがみどりがでてきました」(8月18日)
さわってみたくもなりました。
「つべつべしてきもちがいい。それからちぢこまりました」(8月23日)
幼虫になってから16日目で、えさを食べなくなりました。
あんなに食いしん坊だったのにどうしたのだろう。
病気になったのだろうか。
いいえ、17日目にさなぎになったのでした。
「いつになったらあげはちょうちょうがでてくるのかな」(8月27日)
「あたまのほうが(さなぎの)くろくなってきました」(8月30日)
手術から戻ると、虫かごが空っぽになっていました。
どこに行ったの?
さなぎは?
慌てて母に聞くと、なんと、私の手術中に蝶になってしまったというのです。
外に逃がしたよって。
1977年のことです。
<あとがき>
母が、この観察日記を押し入れの中に保管してくれていました。
蝶になるところを見られなくて、残念だったこと、青空の中へ飛んでいく様子をたくさん想像したことを思い出しました。
顕微鏡を使って「植物の研究」
小学5年生の理科の授業で顕微鏡を使うことがありました。
池の水を汲み、その水をスポイトで吸い取り、プレパラートに一滴落としてレンズをのぞき込む。
すると、何らかの生物が見えました。
何だったのかは分かりませんでしたが、大興奮しました。
急きょ、モーレツに顕微鏡が欲しくなりました。
しかし、親に買ってもらうには理由が必要です。
学校の帰り道、作戦を考えながら歩いていました。
そんなとき、雑草が目にとまりました。
コレだ !
「夏休みの自由研究は、顕微鏡を使って植物の研究をしよう!」
めでたく顕微鏡を手に入れた私は、道ばたに生えている植物を採りに出かけました。
蝉の鳴き声に耳を傾けながら、つゆくさ、エノコログサ、カワラケツメイ、オヒシバ、ツルニガクサ、オオバコ、ハハコグサ、イヌタデ、コゴメガヤツリなどを手に入れました。
その時は魅力的な植物だと思っていましたが、今思えば雑草ばかり・・・。
おこずかいをもらって、近くのショッピングセンターの文房具屋さんで大きな画用紙を買ってきました。
好きな色、ピンク色の画用紙を選んでウキウキしました。
採集した場所、目で見た花の様子のスケッチ、顕微鏡で見た根、花、くき、葉の様子をスケッチ、そして実物を押し花にして貼り付けました。その実物を使って、根の生え方なども合わせて記載しました。
また、別添えのノートには、花が咲く時期、植物の高さ、植える時期、特徴など、本で調べた情報を書き込みました。
顕微鏡を買ってもらいたい一心で考えついた自由研究でしたが、植物のことを調べ、観察してスケッチするのがとても楽しかったです。
今から37年前に買ってもらった顕微鏡、今も大切に持っています。
西田美術館 学芸員 宇田 奈緒美 働いている美術館から、立山連峰を眺めることが日課です。 絵に関わるお仕事ができて幸せに思っています。 まちあるきが好きで、その土地にしかない美味しいモノを探すのが趣味です。