坪田 なぜゲームは面白いのでしょうか。それは攻略法などを身に付けていくと一つ一つステージが上がり、自分の成長を実感できるからです。一方、日々の勉強で、自分の成長を感じることは難しいですよね。実感ができないから、やる気も起きないわけです。
でも絶対に、人間は1秒ごとに成長しています。
以前、私の塾にこんな男子生徒がいました。入塾当初は座席についても、机に足を投げ出して、全くやる気を見せませんでした。それがある日、問題用紙を見て、ペンを放り投げたんです。私が「おぉ、成長じゃん!」と褒めると本人は驚いていましたが、私から見れば、ペンを持ってちょっと考えたことが一つの成長だったわけです。勉強はこの積み重ねです。
ゲームばかりしているように見えますが、細かく生活を見ていれば、小さな成長が見えてきます。親がそのことに気づき、本人にも実感させることが大切です。
編集室 先生は心理学を生かした指導法で、子どもたちのやる気を引き出してこられました。そもそも、なぜ心理学だったのでしょうか。
坪田 こんな調査結果があります。高校2年の生徒に「勉強が好き?得意?」と聞くと84パーセントが嫌い、83パーセントが苦手と答えたそうです。これっておかしくないですか?
例えば小学校1年生からテニススクールに通い続けてきた子どもが、高校2年生になった時に「テニス好き?得意?」と聞いたとします。そして「嫌い、苦手だし」と答えられたらどう思いますか?そんなスクールありえないですよね。
でも日本の教育は、そうなんです。12年間かけて、税金をかけて教育した結果がこれなんです。もちろん先生方は一生懸命やっておられます。私は教育のシステムがおかしいと感じています。
こう考えるようになったきっかけは、高校時代でした。日本史の授業があまりにもつまらなくて寝ていたら、先生に怒られました。しかし私からすると「あなたの授業がつまらないから」寝ていたんです。お店に行って、おいしくない料理が出たら食べませんよね。でも学校だけは「まずくても食え!」なんです。おかしいですよね。
それで「教える」ためには、知識よりもコミュニケーションを重視したほうがいいんじゃないかと考えるようになり、心理学や他の認知科学を学び続けています。
坪田信貴(つぼた・のぶたか)

坪田塾塾長。累計120万部突破の書籍『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(通称ビリギャル)や累計10万部突破の書籍『人間は9タイプ』の著者。
心理学を駆使した学習法により、多くの生徒の偏差値を短期間で急激に上げることで定評がある。大企業の人材育成コンサルタント等もつとめ、起業家・経営者としての顔も持つ。新著に『どんな人でも頭が良くなる 世界に一つだけの勉強法』がある。
3歳と0歳の娘のパパ、東京都在住。