コノコト編集室に先日、あるアナログゲームの存在が知らされました。
「BEST SCOOP!(ベストスクープ)」というタイトルで、お題に従って新聞紙面から記事を素早く探し出すというもの。実物を早速取り寄せて同僚と体験会を開いてみました。

新聞風の見出しがお題

ゲームのセットには、お題のカード16枚と、虫メガネをかたどったプラスチック製のアイテム6個が入っていました。お題のカードは新聞の見出し風のデザインです。

ルールはいたってシンプル。親がカードで引いた「長い漢字熟語」「大きい物・大きい事」などのお題にふさわしい答えを新聞紙面から見つけ、虫メガネを置きます。一番最初に虫メガネを置いたプレイヤーが10秒カウントする前に、ほかのプレイヤーは自分の虫メガネを置かなければいけません。お題に最も近い人が勝者となり、ポイントをもらえます。

最大で35万字から答えを見つける

6人が参加し、いよいよ体験会スタート。広げるのはもちろん北日本新聞です。



北日本新聞の1ページあたりの文字数は約9,900字で、これは1行12文字、1段69行、全12段の計算で求められます。この日の新聞は36ページあったので、写真や広告などが全く入っていないというありえない想定をすると、全体では約35万7,000文字。400字詰め原稿用紙の換算で約890枚分に達し、長編小説並みの文字から答えを探すことになります。

最初にゲームの親が引いたお題は「より未来の時間」で、地域のニュースが詰まった見開きの紙面から探すことにしました。20日、7月31日…。6人の答えのうち「2027年初夏」が最も遠い未来を指していました。



これはゴールドウインが南砺市城端地域に整備する自然体験施設「プレイアースパーク」のオープン時期です。城端地域の活性化を目指す団体の発足を紹介する記事で触れられていました。次のお題「画数の多い漢字」も同様に進めていきました。

個人の価値観に左右されるお題

戸惑ったのが「役に立ちそうなこと」というお題のターン。どのような情報が役に立つかは個人の価値基準に委ねられるからです。イベントの見どころ紹介や天気予報などに虫メガネが置かれましたが、最終的には多数決で答えを「立山眺望」の記事に決定。富山市から立山連峰がどれほど望めるかをパーセンテージで示すコーナーで、富山県の新聞だからこそ掲載されている内容でした。



当たり前ですが、体験会に参加した同僚は日頃から新聞に関わりの深~い生活を送っています。ゲームの感想を聞いたところ、「くまなく紙面に目を通すきっかけになる」「普通に読むより記事の内容が頭に入る」などの意見が出ました。実際に後日、筆者がプレイアースパークの概要をまとめた記事を読んだ際、「2027年初夏開業」という情報が強く記憶に刻まれていたことに驚きました。

偶発性と一覧性が紙面の強み

素直にゲームとして面白く、体験会は大変盛り上がりました。そして疑問がわきましました。なぜ新聞を使ったゲームを生まれたのかと。

「BEST SCOOP!」を手掛けた「ルテシア」(神奈川)社長の大山徹さんに取材しました。大山さんは前職の電通社員時代に、新聞関係者からの相談を受けて「BEST SCOOP!」の制作を開始しました。2023年に独立し、ボードゲームの企画開発のルテシアを立ち上げてから本格的に販売を始めます。



大山さんは新聞の強みを「情報の偶発性と一覧性」と説明し、ウェブにはない、紙だからこその特色だと言います。教育現場での「BEST SCOOP!」普及にも力を入れ、学校で体験会を何度も開いてきたそうです。子どもたちが新聞に興味を持つきっかけにしてもらい、メディアとしての特性を知る-。それがメディアリテラシーの向上につながると考えているからです。体験した子どもたちはゲームを通じて地域のニュースなどを知り、驚きを持って楽しんでいたそうです。「新聞はまだまだ可能性があるメディアだと思います。『BEST SCOOP!』は大人も楽しめますよ」と紹介します。

「BEST SCOOP!」は文字や情報の集合体としての新聞のポテンシャルを生かすゲームです。外になかなか出かけられない梅雨時におうちで楽しむのもおすすめです。
商品の購入はECサイトから。学校関係者は割安で買うことができます。詳しくは「BEST SCOOP!」のHPから。