銭湯好きが高じて立案した「サっぱり湯ったり」コーナーが2023年11月に始まってから28回目を迎えた。今回の「ファミリー人工温泉 ひらきの湯」(富山市開)はよく通う銭湯で、今日まで掲載を温めてきた。せっかくなので、一緒に通う祖母との思い出をつづりたい。(飯野真衣香)

「ファミリー人工温泉 ひらきの湯」の外観。45台とめられる駐車場は常に満車に近い

 ここの売りは、無数の小さなバブルを放出する「泡湯」や、「超」の一文字が噴き出しの威力を物語る「超ジェット」だ。開業した2004年当時、記者は5歳。正直言って記憶はないが、祖母に聞くと「超ジェット」は水深1メートルで子供は入浴が難しく、「泡湯」はプクプクと水面をはねる泡が口に入るのが怖くて、祖母の膝に座って高さを出して入っていたそうだ。

深さが1メートルある「超ジェット」。噴き出しが強く、油断すると体が流されそうだ

旅行代わりのぜいたく

 実はホームともいえる銭湯は別にあった。祖父母が理容店を営んでいた自宅の隣が銭湯で、雨の日も雪の日も敷地から一歩で「ぴょん」と行けて、同じ町内の幼なじみからは「まいちゃんちはいいなぁ」とうらやましがられた。

 客商売を長くしていた祖母は、身なりを清潔に保つことや“ご近所付き合い”を大事にしていた。自営業だと家族で出かける機会が少なく頻繁に旅行に行けない代わりに、「日々のぜいたく」として毎日銭湯に連れて行ってくれていたのだと、今になって実感している。

 ホームの銭湯が休みの時に行くのが、ひらきの湯だった。露天風呂や種類豊富な内湯がそろい、少しぜいたくな気持ちになれる特別感があった。

 ただ自宅から少し離れる分、ホームの銭湯に比べて知らない人ばかり。それでも「あら、お孫さんけ? 一緒に来たが?」と声をかけてくれる人が多かった。ホームと違って家族構成を知らない常連から「お子さん?」と聞かれた祖母が、帰りの車で「ばぁちゃんに見えんって!」とうれしそうにハンドルを握っていたのを覚えている。

500円で入れる公衆浴場では露天風呂を完備しているところは珍しく、客からも好評
客同士が向かい合わせに座れるサウナ室

祖母の居場所の一つ

 ホームの銭湯は24年1月に閉店した。記者は大学進学や就職に伴い、祖母と一緒に銭湯に行く回数が減ってしまったが、祖母はすっかり「ひらきの湯」の常連になった。

 昨年冬、足をけがした祖母が数カ月ぶりに銭湯に行くというので心配で付き添った時。

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