スポーツバラエティーやNHKのEテレ『天才てれびくん』などに出演し、老若男女に人気のお笑いコンビ、ティモンディ。「やればできる!」の合言葉でおなじみの高岸宏行さん(33)と、落ち着いたトーンに知性が光る前田裕太さん(33)が大学4年時に結成しました。学生時代に甲子園やプロ野球選手の夢を追った二人に、進路に悩む小中学生へのアドバイスを聞きました。

甲子園目指し、親元離れ強豪校へ
ーお二人は高校野球の強豪である愛媛県の済美高校で出会いました。出会う前、小中学生の時はどんな子でしたか?
高岸 本当に野球ばっかりやっているような子どもでしたね。基本的に体を動かして、みんなでわいわいするのが好きでした。
前田 トータルで言うとぼくもずっと野球でした。家では本を読んだりもしていました。
ー前田さんは出身が神奈川県ですが、高校は愛媛県に進学されました。距離にして500㌔余り離れた場所での寮生活。不安や後悔はなかったのでしょうか?
前田 「プロ野球選手になる」とか「甲子園に行きたい」という夢や目標から逆算したら、大きな決断というよりは手段の一つだと思えました。

地元にも甲子園に行けそうな高校はありましたけど、より行けそうなのであれば、全然そっち(済美高校)の方が…っていう感じでしたね。母親は「ちょっと遠いんじゃないか」って反対してましたけど、父親は「やりたいようにやりな」って。
応援〝される〟から〝する〟側に
ー野球に打ち込んできた日々から、お笑い芸人を志したきっかけは何だったんですか?
高岸 僕はプロ野球選手になることだけを考えて生きてきたんですけど、大学時代にイップス※になってけがもして、夢を諦めることになりました。その時に、これまで僕を支えてくれた人や、僕がマウンドに立つことで試合に出られなかった選手たちの存在をより強く感じて。
※イップス…これまでできていた特定のスポーツ動作が、精神的な緊張や不安のためできなくなる運動障害。

次はそういう人たちに恩返しをしたり、応援したりできる人間になりたいと思いました。どんな職業があるだろうと考えた時に、東日本大震災の復興支援をするサンドウィッチマンさんの活動に素晴らしさを感じて、自分も芸人という枠組みの中で、勇気や元気を与えられるかなと思って、サンドさんと同じ事務所に入りました。
前田 僕はもう、誘われたから(笑)。甲子園出場がかなわず、プロ野球選手の夢も高校卒業時に諦めた。大学では野球もやらず、燃え尽きていた、というか自暴自棄のような感じでした。大学院への進学も決まっていたんですけど、そんな時に高岸に声を掛けられ、なんか楽しそうだなぐらいの感じでしたね。
誘ってきたのが、本当にきつかった高校時代を一緒に過ごしてきた高岸だったから、っていうのはあります。全く知らない人だったらもうちょっといろいろ考えていたんだろうなと思いますけどね。
元々はネガティブな人間
ー高岸さんの「やればできる!」というフレーズは済美高校の校訓でもあるそうですね。どのような思いで発していますか。
高岸 僕の中では「やれば成長できる」という思いを込めて、いつも鼓舞させてもらっています。よく言われることですけど、取り組んだ結果、成功や失敗はもちろんあります。でも、前向きに挑戦したことは必ず成長につながるよね、って思うんです。
僕は元々根幹で言うとすごくネガティブな人間。「これを抑えないと甲子園に行けない」「ここで150㌔出さないとプロに行けない」っていうマイナス思考な考え方で野球をやっていたんですけど、仲間の存在とか、地元の人、チームメートの親御さんたちの愛情があったからやってこれたと思います。
高校の時も、愛媛で寮生活をしていた自分がけがをした時は地元のチームメートの親御さんが休みに僕を車に乗せて病院に連れて行ってくれたり、お弁当を作ってくれたりして・・・そういう人たちに「ティモンディの高岸知ってるよ」「うちの子と同じ野球部だったんだよ」とか、誇りに思ってもらえるような人間になろうと。

ー高校球児だった二人の大きな夢として、甲子園がありました。芸人の今、当時で言う〝甲子園〟のような目標はありますか?
前田 これまで大きいゴールを定めてきた生き方だったんですけど、本来、甲子園に行けなくたって、地方で1回戦負けだって、野球を楽しく一生懸命にやっている高校生に価値の差なんてない、それで人生豊かなのに、甲子園に行けなかったやつと行けたやつって社会が勝手に決めているところがある。だから、大きい目標を掲げるというよりは、野球で言うと「毎日の練習楽しかった」って思えるような、小さなことを積み重ねていく方が大事だな、と30歳を超えた最近、思うようになりました。
やりたいようにやったらいい
ー富山の子どもたちも、将来に悩み、時には挫折を味わうこともあるかもしれません。かつての自分や、子どもたちにかけたい言葉はありますか。
前田 悩むって、選択肢で悩むと思うんですよ。例えば行きたい志望校があるけど学力が足りない…とか、理想と現実の差をどれだけフィットさせていくかという悩みだと思う。僕は結局甲子園も行けなかったし、プロ野球選手にもなれなかったけど、野球をやったことに意味がなかったかというと、そうは思わない。何をやっても意味になるから、やりたいようにやったらいい。それが結果駄目でも、その先で、やってよかったと思えることもある。気負い過ぎず、気楽に一歩を踏み出せばいいんじゃないかな。これは自分が成功していたら、もし自分が大谷翔平だったら気付かなかっただろうなって思います。だからそこは大谷翔平じゃなくて良かったなって(笑)。大体みんな大谷翔平になりたいんですけどね。
高岸 悩むのは「こうしたい」という思いがあるからこそ。こんな自分になりたい、より高みを目指したいという気持ちは夢につながるし、悩む自分を駄目だと思わなくていい。自分がときめくもの、やりたいものは誰にも気を遣わずに、どんどんチャレンジしていってほしい。あなたなら「やればできる」と伝えたいですね。
高岸宏行(ボケ)・・・1992年生まれ。愛媛県出身、滋賀県育ち。済美高→東洋大。大学3年時の故障をきっかけに、芸人の道へ。2022年に結婚し、24年に第1子が誕生。プロ野球独立リーグ栃木に在籍する現役の野球選手でもある。
前田裕太(ツッコミ)・・・1992年生まれ。神奈川県出身。済美高→駒澤大→明治大法科大学院中退。大学卒業直前に高岸に誘われコンビを組む。料理やゴルフ、裁縫も得意で、自分が着るシャツやパンツも作っている。読書家でもあり、2025年に初の自著『自意識のラストダンス』を出版した。