お笑い芸人のあばれる君(38)は芸風も生き方もパワフルです。中学生で自分の道と定めた「お笑い」を突き詰めながらも、世界遺産検定1級の資格や、アウトドア、ポケットモンスターのゲームなどの知識とスキルを生かして幅広く活躍しています。家庭では3人の男の子のお父さんとして子育てにまい進中。あふれるバイタリティーの背景を聞きました。

正しい生活リズムが自分の基礎
ーお笑い芸人を目指したきっかけは?
小学6年生からスポーツ少年団でソフトボールをやっていて、代表のあいさつをしたり、チームメートのモノマネを披露したりしていました。人前に出るのが楽しかったんです。プロ野球選手に憧れていたんですけど、身体能力が足りず現実味がないと気付き、中学1年生でお笑い芸人になりたいと思いました。
テレビでタカアンドトシさんがカジュアルな服で漫才をしているのがかっこよくて。お笑い芸人になれば俳優もできるし、歌も歌おうと思えばできます。オールマイティーでこれ以上の職業はないと感じました。他の選択肢はなくて「なる!」って感じでした。

それに、たくさん旅して世界を見たかったんです。通学中にトラックの運転手さんを見て「どこに行くの?」「どのサービスエリアに寄るんだろう?」って想像していました。いろんなところに冒険したいと思っていたのかもしれません。
ー「冒険」のキーワードは、無人島からの脱出など、現在のお仕事に通じますね。どのようなご家庭で育ったんですか?
結構厳しかったです。プレゼントをもらってリアクションが薄いと怒られたり、スケートボードをやったら「不良の遊びだ」って言われたり。今じゃスケボーはオリンピック競技じゃないですか。どう思っているのかな、お父さん! 僕は全部の通知表で落ち着きがないって書かれましたから、相当だったんでしょうね。かなり叱られました。
お母さんは栄養バランスの取れた食事を毎日作ってくれました。みんなでしゃべりながら決まった時間に食卓を囲む。ちゃんと寝て、学校に行く。正しい生活のリズムが心と体を強くするというのが自分に根付いています。
芸人と先生って似てる
ー大学進学をきっかけに上京し、在学中に中学社会科と高校世界史の教員免許を取りました。中学校で教育実習をしたそうですね。
1秒でも早く芸人になりたくて高校生で吉本興業の養成所のパンフレットを取り寄せたんですけど、親に「大学行きなよ」と説得されました。教員免許は大学の学費を出してもらってますし父親が先生だったので、何か残るものを取りたいってくらいでした。

ただ先生と芸人は人前でパフォーマンスをするという点で非常に似ていると気付きました。先生も授業で生徒を楽しませようとします。パネルを使って分かりやすくしたり、黒板にマグネットを貼ったりするのもテクニック。面白く教えることは今もやりたいです。世界遺産に関する授業のロケをやったんですが、ネタを交えながら教えました。芸人と先生がすごく混じり合っているなと感じました。
大学の4年間は社会常識を学ぶことができて有意義でした。Suicaのカードを改札機に入れるくらい世間知らずだったんですけど、バイトをし、いろんな人と出会い、学歴関係なく一生懸命働いて立派な人たちがたくさんいると知りました。高校卒業後すぐに養成所に行っていたら世間の荒波に押しつぶされていたかもしれません。人生無駄なものはないってことなんでしょうね。
台頭してきた後輩に対抗
ーYouTubeではアウトドアやポケモンのゲーム対戦動画などを配信。2022年には難関の世界遺産検定1級に合格しました。幅広いフィールドですね。
向上心はあるかもしれませんができる範囲です。ただ世界遺産検定は勉強しました。コロナ禍で家にいなければならず、さらに第7世代と呼ばれる後輩たちが台頭してきました。彼らは簡単に笑いを取っていくので「君たちがそんなに簡単に笑いを取るなら僕は資格を取る!」と決意しました。このキャッチコピーでユーキャンのCM来ないかな?(笑)
ーコツコツ努力するのは得意なんですか?
高校時代は山岳部で、3泊4日で登山したりしました。当時は「何で登らないといけないの?」って思っていました。でもどんなに長くても歩を進めれば必ずゴールにたどり着きました。これは全てに通じると思うんです。

世界遺産検定も一つずつ問題を解いて、記憶に残せばいつか合格できるじゃないですか。努力した結果が目に見える形で分かるんです。お笑いはどこに向かっているのか分からなくて不安に感じることもあるんですけど、合格して芸の一つになったので少し自信が付きました。一歩一歩進むのは大切ですね。
真剣に一つのことを突き詰める
ー昨年男の子が生まれ、3児のパパ。息子さんや読者の子どもたちに伝えたいことは?
僕のお父さんはずっと先生をしていました。おじいちゃんは米農家、ひいおじいちゃんは刀鍛冶です。みんな一つの道を突き詰める求道者、そして職人です。だから自分も一つのことしかやりたくない。いろいろなことに取り組んでいるけど、お笑いが全ての基盤です。アウトドアやポケモン、世界遺産検定などの武器を必要な場面で出す。時にはネタも。僕は何事も真剣にやることが大切だと思います。たとえ失敗したとしても自分に自信が持てるからです。誰かが笑っても関係ありませんよ! 周りは気にせずに一生懸命突き詰めていってください。