2024年元日の能登半島地震で、震度5強の揺れに襲われた氷見市宇波の旅館「くつろぎの宿 うみあかり」。地震発生直後も、源泉掛け流しの温泉の利用や懐石料理の提供といったサービスの維持に努めた。日帰り温浴施設「別館 潮の香亭」は一時、湯の温度が上がらない状況に陥ったが、本館から源泉を引く応急処置を施し、被災1カ月後に通常営業に戻った。震災からもうすぐ2年。地震発生時にどんな思いでサービス継続を判断したのか。長田卓也総支配人(47)が当時の状況や対応を振り返る。

氷見温泉郷にある旅館「うみあかり」。奥へ進むと日帰り専用施設「別館 潮の香亭」がある

うみあかり本館のロビー。地震の際はいさり火をモチーフにした照明が激しく揺れた
午後4時10分に震度5強の揺れを観測。いさり火をモチーフにしたロビーの照明が激しく揺れた。津波警報が発令され、建物倒壊も懸念されたため、従業員はすぐさま避難誘導を始めた。手分けして最上階の6階まで1部屋ずつ声掛けした。防寒着や毛布をフロントで配布し、潮の香亭の駐車場に宿泊客を移動させた。
日帰り専用のため、潮の香亭の駐車場は広く、約140人を案内するのに適していた。泣き叫ぶ客もおりパニック状態だったが、長田総支配人は「従業員は必死だったけれど、冷静さを保っていたと思う」と振り返る。

能登半島地震発生直後の館内の様子

館内のがれきやガラスの破片を従業員が清掃した上で、食事提供を始めた
氷見温泉郷では避難所に移動するよう指示した旅館もあったが、うみあかりでは午後5時20分に津波警報が解除された段階で宿泊者をいったん客室に戻した。
残り856文字(全文:1533文字)
