11月30日~12月1日に実施する「うみとやまローカルラボ2024ツアー秋編」で会いに行くローカルプレイヤーを紹介します。
シンガーソングライター
北村 瞳さん

南砺市福光にアトリエ「Polaris」を開き、シンガーソングライターとしての活動にとどまらず、幅広い“伝える”取り組みを通じて地域をあたためる北村瞳さんにお話を伺いました。
ー北村さんがシンガーソングライターを志したきっかけを教えてください。
幼い頃から、絵や言葉を通じて自分の思いを表現することが好きでした。中学では美術部、高校では演劇部に所属していたのですが、高校3年生の時に歌や歌詞が持つエネルギーに魅了されて曲作りを始めました。兄の影響で地元の音楽スタジオに通い始めたある日、スタッフの方から「ピアノを弾きながら歌ってみたら?」と勧められたんです。それがきっかけでスタジオのライブに出演し、初めて人前で歌う経験をしました。私にとって大きな転機となり、音楽の世界に本格的にのめり込むようになりました。
東京の音楽専門学校を卒業してからは、ほぼ毎日配信や路上ライブを行い、スタジオに行ったり、人のライブを見に行ったりする日々を送りました。音楽を続けるために、昼間は派遣の仕事をし、仕事終わりの夜の時間や土日はすべて歌の活動に費やす生活をしていました。自主リリースにも何度も挑戦し、そのうちに地元の成人式やお祭りのステージに出演する機会が増えたり、楽曲制作の依頼を受けたりすることが少しずつ増えて、徐々に音楽活動が仕事として広がっていきました。

ー地元富山での活動はどのように始まりましたか?
2018年に結婚を機に富山に戻ってきたのが始まりです。その頃からメディアでの露出も増え、「産声」という曲が県内でCM曲として流れるようになりました。翌年に娘を出産し、2020年にはコロナ禍が始まってしまいました。音楽活動が制限される中で、子育てのために地元で営業職に就きましたが、テレビでは「産声」が引き続き流れ、ラジオ局との番組もスタートしたので、歌えない時期でもシンガーソングライターとしての活動を続けられました。
営業の外回りをしていると、お客さんから「歌を歌っている人ですよね?」と声をかけられることもありました。さまざまな出会いを通じて背中を押していただく機会が多くなり、どこにいても自分らしく生きていける姿をみなさんに見せていきたいと強く思うようになりました。そうして音楽活動にもっと積極的に取り組む決意ができました。

ーアトリエ「Polaris」をオープンするという大きなチャレンジを決心したのはなぜですか?
より自分らしく生きていく方法を模索していた時に、富山市でギャラリーを開いている陶芸家のSayoさんと出会いました。彼女はイタリアでお仕事をされてきた経験を活かして、現在は富山市の素敵なギャラリーで陶芸教室やイベントを開催していて、その生き方が私に大きな影響を与えました。Sayoさんには娘さんが一人いらっしゃって、好きなことをしながら夢を叶え、周囲から応援されている姿が本当に幸せそうでした。彼女から、自分の居場所を持つことの大切さを教わりました。
Sayoさんは「瞳ちゃんが本気で場所を持つなら、私が力を貸すよ」と言ってくれました。私は営業の仕事を辞めて、本当の自分の居場所を見つけることを決意しました。Sayoさんや地域の方々のサポートを受けて、2023年にアトリエ「Polaris」をオープンすることができました。
お店の名前「Polaris」は北極星を意味し、昔から船乗りや旅人が道に迷った時の目印として使っていた星です。この名前には、迷いから抜け出すという意味も込められています。ここに来た人たちが少しでも人生の迷いを晴らし、自分の心が向かう方向を見つけるための道しるべとなるような場所になればいいと思っています。

ーさまざまな活動であたたかい言葉を届け続けている北村さん。大切にしていることは?
私は「自分らしく生きることで、自分も周りも豊かにする」というテーマで活動しています。曲作りや人前に立つ姿勢は、歌を始めた頃から変わっていません。私に会いに来てくれる人が少しでも「今日があったから頑張れるな」「元気が出た」と感じてもらえることを目指しています。
「自分らしく生きる」ってどういうことかなと考えた時、できるだけ不自然なことをせず、自分が当たり前にできることを選んで自然体でいることが大切だと意識しています。私の場合、言葉が泉のように自然に湧き出てきて、それが歌や文章、話すことで伝えられるんです。例えるなら、赤ちゃんのように純粋で自然な状態でいることが大切だと思っています。赤ちゃんが成長する過程で、周りの大人たちが応援するように、純粋に自然体で動いていると、周りの人たちもそれに応えてくれるんですよね。

ーこれからの意気込みを教えてください。
今、私が目指している「自分らしく生きることで、自分の周りを豊かにする」というあり方を、みんなが実現できたらいいなと思っています。それは、「今の自分を変えよう」とするのではなく、「本来の自然な自分にかえる」ことだと感じています。自分が何にときめくのか、どんな生き方が幸せなのかを、自分自身と真剣に向き合いながら見つけてほしいです。そして、それを見つけたら表現していくことで、自分も周りも豊かにしていく。そんな循環が少しずつ広がっていけばいいなと思っています。
また、私がこの町で自分らしく生きる姿が、地域の子供たちにとって希望につながると信じています。特別な日の喜びよりも、日常の中のささやかな美しさに「生まれてきてよかったな」と思える瞬間を大切にして伝え続けていきたいです。

1990年生まれ、南砺市出身。2007年より作詞作曲とライブ活動を開始。2008年 東京都内の尚美ミュージックカレッジ・シンガーソングライターコースへ進学。都内での音楽活動を経て2018年に富山へUターン。同年4月 富山JA共済CMに「産声」が起用され、県内での活動がスタート。2023年10月に南砺市福光にアトリエ兼カフェ「Polaris(ポラリス)」を開業。楽曲提供やラジオ出演、ライブ、講演、ボイストレーニング講師など、県内での活動の幅を広げている。
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富山オタクことちゃんの編集後記
CM曲「産声」などでお馴染みの、やわらかく透き通る北村さんの歌声。その北村さんが手がけたアトリエ「Polaris」には、彼女の持つ安心感や温かい雰囲気がそのまま広がっています。ツアー当日には、北村さんの“好き”に満ちた空間で、みなさんそれぞれの“好き”や“自分らしさ”と向き合う時間を過ごしていただけたらと思っています。
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11月30日(土)~12月1日(日)実施の『うみとやまローカルラボ2024』秋編では、小矢部市・南砺市(井波・福光)で地域活性に取り組む“ローカルプレイヤー”の皆さんに会いに行く学びの旅を開催します。皆さんのご参加をお待ちしております。