11月30日~12月1日に実施する「うみとやまローカルラボ2024ツアー秋編」で会いに行くローカルプレイヤーを紹介します。

NOSE ART GARAGEオーナー MisiiNプロデューサー
森松 宏介さん

自然と文化が融合する風情ある町並みが特徴的な南砺市福光地域。日本の著名な版画家・棟方志功が疎開先として1945年から約3年間滞在し、福光の風景や人々から大きなインスピレーションを得たことでも知られています。芸術・文化に親しみが深いこの町でアートギャラリーをひらき、アーティストのプロデュース活動を行う森松宏介さんにお話を聞きました。

ープロデュース活動だけでなく、自身も歌手としてご活躍の森松さん。アーティスト活動を始めたきっかけを教えてください。

父の姿を見て、自然と芸術に関わる仕事がしたいと思うようになりました。父は、120年の歴史を持つ和菓子屋を営む傍ら、長年にわたり静物画を描くことに情熱を注いでいました。その影響で私もアートの世界に憧れを抱くようになりました。

高校生の頃、アメリカのフォーク・デュオ「サイモン&ガーファンクル」のライブ映像に刺激を受けて歌を始めました。初めてギターを持って富山駅で歌った日、尾崎豊さんの曲を歌っていると、ひとりの女性が立ち止まって「息子も尾崎豊が好きで音楽をやっているの」と6,000円とエールを贈ってくれたんです。これが私にとって初めての成功体験であり、歌で対価を得られたことが大きな自信になりました。その後も富山市に通い続け、歌い続けるエネルギーとなりました。歌を通じて、これまで出会えなかったような人たちとの出会いが、とても刺激的でした。

 

ー歌手としての活動からギャラリー運営やプロデューサーへと転身されましたが、現在「NOSE ART GARAGE」ではどのような活動をされていますか?

大学卒業後、歌手として活動しながら、音楽に関連するさまざまな事業の可能性を模索してきました。その中で、アートと音楽を融合させたアプローチに強い関心を抱き、「NOSE ART GARAGE」を舞台に、音楽を軸とした制作活動を始めました。現在、青山と南砺市福光の二拠点でギャラリーを運営し、アーティストのプロデュース・マネジメントや、展示会、ライブコンサートの企画・制作に取り組んでいます。また、企業や自治体向けに、音楽・映像・ウェブデザインなど、芸術のリソースを活用したBtoBのクリエイティブ制作も行っています。

日本には主に二つのタイプのアートギャラリーがあります。一つは、アーティストをプロダクションのように抱え、展示会を企画して作品をお客様に紹介するコマーシャルギャラリー。もう一つは、アーティストに展示スペースを提供し、売上を立てるレンタルギャラリーです。「NOSE ART GARAGE」はコマーシャルギャラリーとして、アーティストデュオ「MisiiN(ミシエヌ)」と、和菓子作家である私の弟「Yushi Morimatsu」の二組のアーティストを手掛けています。

本質的な家族経営にこだわりながら、魅力ある事業を創造し、社会にうつくしく機能できるよう活動を展開しています。私にとって“家族”は大きなキーワードであり、アーティストのプロデュースやマネジメントは、どれだけ家族のように共に時間を過ごしながら進められるかが重要だと感じています。

 

ー「NOSE ART GARAGE」を地元の南砺市福光にも展開した背景を教えてください。

地域に長く愛されてきた家業の和菓子屋を、私たちの大切なアイデンティティとして未来に残していきたいという思いがありました。そこで、弟と共に、自分たちのスキルと家業をどう組み合わせられるかを考え始めました。最初は、地域とのつながりを築くことからスタートし、2018年頃から富山に通い、コンサートやイベントの企画など、ソフト面での取り組みを始めました。通ううちに、地域の活力としてさらに貢献できるように事業拠点を設けたいと思い、故郷にもギャラリーを展開することにしました。

両親から受け継いだ芸術の才能は、おそらく弟の方が強く引き継いでいるのではないかと感じています。弟は和菓子作家として、その自由な創造性を活かし、“食べられるアート”として和菓子を提供しています。私はプロデューサーとして、弟が生み出す作品をより多くの人に届けられるような環境をつくっていきたいです。伝統の和菓子の良さを守りつつ、新たな芸術活動としての可能性を追求していけるのではないかと思っています。

 

ー戻ってきて感じる富山・福光の魅力はありますか?

富山の魅力は、立山連峰をはじめとする圧倒的な自然資産だけでなく、何気ない日常の風景の美しさにもあります。リトリートには最適な場所で、自然と文化的な景観の絶妙なバランスが魅力です。自分自身を見つめ直しながら日々の活力を養うことができる場所だと感じています。

特に、生まれ育った福光の町は、その町並みや雰囲気、住んでいる人々の芸術への親しみや感受性など、文化レベルが非常に高いと感じます。私が芸術の仕事を選んだのは、この環境があったからこそ必然だったのだと、強く思っています。

 

ー今後の展望を教えてください。

今年はギャラリーとレコード会社との事業提携が決まり、MisiiNの作品リリース、JAPAN TOURの実施など、より多くの人たちとつながる、新たなスタートラインに立つことができたと感じています。これからも自分たちの意思や作品の個性を大切にしながら、たくさんの人の心を動かすような作品を生み出していきたいです。そして、富山県を拠点とするアーティストが、世界中の人から愛される存在になることを目指していきます。

profile  もりまつ・こうすけ
南砺市出身。早稲田大学卒業後、コーラスグループのメンバーとして歌手活動をスタート。メジャーレーベルからCDリリース。都内の大規模な会場での単独コンサートを数多く経験。アーティストの育成にも力を注ぎ、ボーカルディレクターとして、数多くのメジャーアーティストのレコーディングやツアー制作を手掛ける。2014年5月、株式会社ビッグノーズを設立。2016年3月、青山にアートギャラリー「NOSE ART GARAGE(ノーズアートガレージ)」を開設。2020年7月、南砺市福光地域にも同アートギャラリーを開設。
文・徳田琴絵(うみとやまローカルラボ ツアーコーディネーター・富山オタクことちゃん)
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富山オタクことちゃんの編集後記
森松さんの活動に家族への思いや地域への誇りが深く紐づいていることを知り、ますます森松さんのあたたかいお人柄を知ったひと時でした。森松さんがプロデュースするアーティストたちを通じて、富山の魅力がさらに多くの人に広まっていくことでしょう!
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11月30日(土)~12月1日(日)実施の『うみとやまローカルラボ2024』秋編では、小矢部市・南砺市(井波・福光)で地域活性に取り組む“ローカルプレイヤー”の皆さんに会いに行く学びの旅を開催します。皆さんのご参加をお待ちしております。
お申込みはこちらから(11月11日まで) ※終了しました。