どこか懐かしい街並みや風情ある路地。車で移動するとつい見過ごしてしまうが、そんな場所は意外と身近にあったりする。名所というわけではないが、ストーリー性のある風土や歴史をひもときつつ追憶の街角を歩くのも面白い。生活する住民の息づかいを感じながら、心地よい汗をかいてみたい。

建築見比べ寺巡り

 はんなり寺巡りを楽しめるのが富山市の中心市街地に近い梅沢町周辺。富山藩の初代藩主・前田利次が富山城の南側を守るため、寺院を集めたのが始まりとされ、さまざまな宗派が集まっている。1870(明治3)年、政府による神仏分離令のもと、富山藩が合寺令を出した際に現在の梅沢町という町名になった。

 利次の菩提寺、曹洞宗光嚴寺の三重塔は、戦災で焼け残った。富山市一帯が焼け野原になった際、復員兵が富山駅から戻る時の目印にされた。

光嚴寺の三重塔

 近代的な鉄筋コンクリートの日蓮宗・妙国寺も異彩を放っており、寺院建築を見比べながら歩を進めるのも一興だ。

寺院建築を鑑賞しながら散策したい。右の寺は妙國寺

七曲がりの街道筋

 富山市西部の願海寺地区では、戦国時代の天文年間、敵の軍勢の動きを鈍らせて願海寺城を守るため、直角に曲がりくねった「七曲がり」と呼ばれる道が造られた。

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