照ノ富士と日馬富士の2横綱をはじめ、多くの弟子を関取に育て上げた伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)が2023年末、黒部市で講演した。テーマは「育てる」。伊勢ケ浜部屋は角界随一の厳しい稽古で知られ、親方は熱海富士や翠富士ら新世代の力士を指導している。この日、語った育ての極意には、子育てはもちろん企業の人材育成にも通じる真理があった。

全員、関取にしたい
講演会はJAくろべ女性部の創立70周年を記念して開かれ、約300人が聞き入った。伊勢ケ浜親方は、元NHKアナウンサーで大相撲中継を担当した藤井康生さんとの対談しながら語った。
伊勢ケ浜親方は、部屋の第一目標に、入門した子どもたち全員が関取になるように指導することを掲げる。現に、これまで10人以上の関取を育ててきた。
長年、大相撲を取材してきた藤井さんも「これは大変なこと」を舌を巻く。

過酷な稽古を経験、見直すべきは見直す
伊勢ケ浜親方は現役時代、朝に100~150番、さらに夕方100番という過酷な稽古を経験。その上で、稽古量を減らす、早朝からの開始をやめるなど、見直すべき点を見直し、現在の指導法にたどり着いた。
稽古量を減らしたといっても、親方の現役時代に比べれば…という話で、数ある相撲部屋の中では有数の厳しさという。伊勢ケ浜親方は「20番じゃ準備運動にもならない」「稽古しないと横綱には上がれない」と言い切る。

よく見て、よく話す
途中でやめる力士もいるが、一人一人をよく見て、全員に声をかけるようにしているという。

そうやって話す機会を設けるのは「親方はいつも見ているんだよ」と伝えるためだ。「そうすることで向こうもこちらの気持ちを受け取ってくれる」。信頼関係を築くため、一朝一夕ではない地道な関わりを続けている。

63歳の現在もトレーニング
育ての極意は、講演会の後半に一気に語った。「子どもというのは親のまねをする。お母さんが机の上に足載せてあんパン食べてたら、絶対まねする。だから、