見た目はシンプルだったり、素朴だったり。でも、食材や調理工程にこだわり、格別な味を楽しめる料理があります。派手なものやおしゃれなものもいいけど、料理はやっぱり「味」が一番。「映え」ばかりを気にしているとちょっと疲れてしまいますよね。今回は、気軽に食べに行けるような、ふとした瞬間にまた食べたくなるような、そんな飾らず、気取らず、味で勝負する「愛され飯」を紹介します。(情報は取材時の内容です)

中国料理 美好(みよし、高岡市)

トンカツと卵あん 最高のハーモニー

 高岡大仏近くの路地裏にある町中華。2代目の木下敬章さんは義父で創業者の故久雄さんの「日本人向けの中華」という教えを守り、香辛料はあまり使わず、あっさりとした味わいの中華料理を提供している。

「中華風カツ丼」(1,050円、スープ付き)飽きのこない味わいでリピーターが多い。昼は950円でみそ汁、おしんこ、杏仁豆腐、ドリンクが付く 

 久雄さんが考案した人気メニュー「中華風カツ丼」はトンカツに卵あんをかけたシンプルな丼飯。中華スープをベースにしたたれを卵でとじたあんは甘みがあり、からっと揚げたトンカツと絶妙なハーモニーを奏でる。木下さんは「よりおいしくなるように」と日々工夫を重ね、あんのとろみ具合などをアレンジ。「おいしい」を今も追求している。

「チャーシュー丼」(950円)厚みのある大きめのチャーシューと甘辛いたれがマッチ。夜はラーメンとのセット(1,100円)も用意する
2代目の木下さん。「『おいしい』に完成はありません。思い付いたことをどんどん試していきたいです」
 

大三元(立山町)

常連客の熱意に押されて再オープン

 創業約60年の中華料理店。2代目の柴田博之さんは、初代で父の和弘さんが亡くなり昨年4月にのれんを下ろしたが、常連客や地元の飲食店仲間に背中を押され7カ月後に再オープン。平日の昼にメニュー数を絞って営業している。

「ラーメン+チャーハン(小)セット」(1,000円)料理にはできるだけ地元の食材を使用。チャーハンもシンプルで、パラパラなのにしっとり感も残っている

 今も昔も愛されるラーメンは、喉ごしのよい麺に透き通ったしょうゆベースのスープ、ネギ、メンマ、チャーシューという潔い構成。「見た目のことは気にしたことがないなあ」と柴田さんは笑う。あっさりとした味わいで、オーソドックスだからこそ何度でも食べたくなる。「父の味を守りたい」という思いを胸に、柴田さんは今日も中華鍋を振るう。

鶏の唐揚げ(700円)県産の鶏モモ肉をしょうゆやショウガ、ニンニクなどで味付け。ジューシーで冷めてもやわらかい
店主の柴田さん。「毎日でも食べられるような味を心掛けています」
 

CHINA LAB(チャイナ ラボ、高岡市)

豊かな味わいのシンプルなおかゆ

 横浜中華街や東京の中国料理店で腕を磨いた月安亮次さんが今年2月、故郷に初めて自分の店を構えた。化学調味料不使用にこだわり、油に香辛料を漬け込むなど、手間暇かけて本格中華を提供する。

「廣東干貝粥と副菜三種」(1,200円)副菜は日替わりで「キュウリの辛味和えと低温調理した鶏レバーのニラソースがけ」など、こだわりの料理を用意する

 ランチに登場する「廣東干貝粥(かんとんがんぺいがゆ)と副菜三種」はおかゆがメイン。見た目はシンプルながら一口食べると絶妙なとろみ具合で、貝柱のうまみとほのかな塩味、鶏油(ちーゆ)のコクが感じられる。旬の食材を使った3種類の副菜は濃いめに味付けされ、おかゆと相性抜群。焦がしネギしょうゆなどをのせて、味の変化も楽しめる。豊かな味わいを醸すおかゆを召し上がれ。

「五目春巻き」(400円)たっぷりのあんを薄い皮でふんわり巻いて揚げている。あんの濃厚なうまみとパリッとした皮の食感が癖になりそう
店主の月安さん。「パンチのあるものから優しい味わいのものまで、いろいろそろえています」
 

 撮影:南部スタジオ