見た目はシンプルだったり、素朴だったり。でも、食材や調理工程にこだわり、格別な味を楽しめる料理があります。派手なものやおしゃれなものもいいけど、料理はやっぱり「味」が一番。「映え」ばかりを気にしているとちょっと疲れてしまいますよね。今回は、気軽に食べに行けるような、ふとした瞬間にまた食べたくなるような、そんな飾らず、気取らず、味で勝負する「愛され飯」を紹介します。(情報は取材時の内容です)
 

石窯で焼くパンの店 Bob(ボブ、富山市)

石窯ならではの風味を存分に

 多くのパン好きに愛される石窯パンの専門店。レンガ造りの大きな石窯で、少しずつ丁寧に焼くパンは、余計なものを一切入れず、小麦粉、塩といったシン プルな食材のみを使う。

「石うすカンパーニュ」(950円、ハーフ486円)かめばかむほど、じわじわとおいしさが口いっぱいに広がる。石窯で少しずつ焼くため、予約がおすすめ

  配合を変え、生地は10種類以上を用意。中でも食事によく合うハード系を中心にそろえる。人気の「石うすカンパーニュ」は、石うすでひいたミネラル豊富な小麦を加えている。外側は石窯パンならではの香ばしさ、中はもっちりとした独特の食感で、豊かな小麦の風味を楽しめる。どっしりとしたドーム型で、家族や仲間と切り分けて食べられるのも魅力。ソフト系や焼き菓子もあるので、こちらもぜひご賞味あれ。

「レトロフランス」(410円)体に良いとされるライ麦を10%配合したフランスパン。ワインによく合う
2代目の畠山考平さん。夜中にまきを乾かし、早朝から石窯を温めるなど、手間暇かけてパンを焼く

すみれ(上市町)

郷愁を誘うシンプルな断面

 昔懐かしいアルミトレイの上に、ラップで包まれたサンドイッチが並ぶ。薄焼き卵やポテトサラダを挟んだ素朴で気取らない断面が、いっそう郷愁を誘う。具材は全て手作りで、口どけのよいカスタードクリームを挟んだ「クリームサンド」が1番人気だ。

上から「タマゴサンド」「クリームサンド」(各2切れ150円)「タマゴサンド」は甘めの薄焼き卵が懐かしい味わい。「クリームサンド」は断面からあふれそうなほどクリームがたっぷり

 70年余り続くサンドイッチの店。かつては店主の宍戸恵美子さんと亡き夫・姑の3人で営んでいたが、今は宍戸さんが一人で切り盛りしている。「体力的にいつまで続けられるかな」と話しつつ、今年に入って新商品を作るなど、宍戸さんの意欲は尽きない。「頑張ってね、というお客さんの声が励みになっています」と笑顔を見せた。

「ウインナードッグ」(200円)ウインナーに卵、キャベツを合わせて食べ応え十分
店主の宍戸さん。夫の味を受け継ぎ、毎日手作りしている

福多屋菓子舗(黒部市)

素朴な姿に爽やかな香り

 こしあんが入った求肥がシソの葉で包まれている。看板商品の「越路の旅まくら」は外も中もほぼ茶色。飾り気のないルックスだが、一口食べるとシソの香りがふわっと広がる。ほのかな塩味があんの甘さと調和し、爽やかな余韻が心地よい。

「越路の旅まくら」(1個140円)シソのパリッとした歯応えと、やわらかい求肥の食感の違いも楽しい

 大正末期に衣類などを扱う雑貨店として創業。旅館向けの菓子製造を手掛けるようになり、さまざまな和洋菓子をそろえる。「越路の旅まくら」は約70年前から作り続け、観光客だけでなく、昔の味を懐かしんで求める地元の人も多い。時代に合わせて甘さは抑えているが、素朴な姿は変わらない。変化を重ねながら伝統を守り続ける。

「黒部の月」(1個170円)ホワイトチョコを混ぜたレモンあんは、さっぱりとした甘さ。紅茶にぴったり
若女将の羽柴千春さん。「安心・安全なお菓子作りを心掛けています」

まるぜん精肉(富山市)

ひき肉たっぷりお肉屋さんのコロッケ

 日々の食卓に欠かせない身近なおかずといえば、コロッケ。きつね色の衣の中にホクホクのジャガイモ。華やかさはないけど、想像するだけでおなかがすいてくる。

「まるぜん自家製コロッケ」(1個120円)北海道産のジャガイモを使用。注文ごとに揚げたてを提供する

 富山市の「まるぜん精肉」は、厳選した和牛など新鮮な肉のほか、約70種類の揚げ物や総菜をそろえる。人気の「まるぜん自家製コロッケ」はひき肉がたっぷり入っており、精肉店ならでは。元々は1950年にコロッケの店として創業しており、その当時からの味を守っている。ねぎまなどの串ものや、肉の盛り合わせ(要予約)も用意している。

手前から「ボンジリ串」(100円)、「鶏ねぎま串」(120円)、「牛ねぎま串」(180円)、「鶏皮串」(100円)バーベキューにぴったりの生串もある。予約がおすすめ
社長の梅田順一さん。「『昔ながらのお肉屋さん』を守っていきたいです」

 撮影:南部スタジオ