見た目はシンプルだったり、素朴だったり。でも、食材や調理工程にこだわり、格別な味を楽しめる料理があります。派手なものやおしゃれなものもいいけど、料理はやっぱり「味」が一番。「映え」ばかりを気にしているとちょっと疲れてしまいますよね。今回は、気軽に食べに行けるような、ふとした瞬間にまた食べたくなるような、そんな飾らず、気取らず、味で勝負する「愛され飯」を紹介します。(情報は取材時の内容です)
ハッピー食堂(富山市)
ゆで麺を使った 具材たっぷり焼きそば
前身の「池田屋」時代に客から言われたひと言がきっかけで、店名に「ハッピー」を取り入れた。それから75年。スタッフが元気いっぱいなおばあちゃん中心という家庭的な雰囲気も相まって、気軽に行ける店として幅広い層から支持を集める。
「いつもお客さんからヒントをもらっています」と2代目店主の池田由美子さん。名物の「焼きそば」もその一つ。先代が横浜ではやっていると聞き、すぐさま取り入れたそう。焼きそばでは珍しいゆで麺を使用し、一般的な蒸し麺よりも柔らかな食感が特徴。具材はハムとキャベツのみというノスタルジーあふれる見た目で、ボリュームたっぷり。常連客を魅了し続けるロングセラー商品だ。
麺類食堂(小矢部市)
昔懐かしのあっさりだしうどん
透き通っただしに麺、ネギ、えびの天ぷら、そして赤巻きかまぼこ。人気ナンバー1の「天ぷらうどん」の具材はいたってシンプル。それでも、先代から受け継いだ地元産のしょうゆと昆布のうまみが効いたあっさりだしは昔懐かしさを感じさせる優しい味わいで、多くの人を引きつけてやまない。
冨久屋(ふくや、富山市)
引き算で作る素材を生かした日本料理
路地裏の静かな一画にある日本料理店。「料理に集中してほしいから、余計なものは入れない」と語る店主の大屋丈二さんが作る料理はどれも控えめなたたずまい。ただ、一口食べると豊かな風味が広がる。調味料は必要最低限しか使わない。食材の味のピークを見極め、素材本来のおいしさを引き立たせるための「引き算」で記憶に残る料理を作り上げる。
コースのみを用意し、その時々の旬のもので料理を提供している。この季節に味わいたいのが「イワシのつみれ」。県産イワシに塩とこしょうだけで練ったつみれは滋味あふれる。昆布・しょうゆベースのだしはすっきりとした後味で、心地良い余韻をぜひ堪能したい。
撮影:南部スタジオ、さいとう写真事務所