令和の時代にあって昭和やバブルの趣が残る場所は不思議なノスタルジーを感じさせる。富山市出身のYouTuber、のぶりんさんは日本各地を旅して、かつての繁栄のにおいを思い起こさせてくれる場所を巡る。YouTuberとして活動する経緯や動画制作の背景を聞いた。(聞き手・田尻秀幸、撮影・さいとう写真事務所)

——のぶりんさんの動画って、社会学のフィールドワークみたいです。なぜ「この街が廃墟同然になったか」という事情が詳しく解説されていますね。まちづくりの研究でもされていたんですか。

 

 

 勉強は全く(笑)。大学の授業にも、それほど真剣になれませんでした。弟は東大の大学院でドローンの研究をしていて、頭いいんですよ。妹もいい大学に行っています。だけど、僕は全然(笑)。

 でも、動画のための研究は楽しいですよ。撮影する際には事前にいろんな記事を探して読んでいます。ノートにメモして覚えて、自分なりの言葉でまとめて話しています。手探りでどういう動画が受けるのかも見えてきました。例えば、サムネに数字を入れているものは伸びやすいですね。数字のインパクトがある。「400億円で造られたホテルが廃墟化」とか。

——動画の内容に変化は?

 

 

 最初の方の動画についてはちょっと反省しているんです。取り上げた地域の廃れている部分しか伝えていない。今思えば、搾取していたような気がします。面白おかしくするために利用していただけ。それに地域の人の声をちゃんと拾っていない。地元の人の声を聞くと、自分たちが事前に調べてきたこととは違うということもあったはずです。最近は生の声を絶対に入れるようにしています。

 地域の新しい展開や、頑張っているという部分があれば入れ込みます。再生数が伸びなくても、その土地の人がうれしく思ってくれたらそれでいいのかなと思うようになりました。

——地方の、特に県庁所在地でもないような街が廃れていくのはイメージしやすいのですが、のぶりんさんの動画を見ていて驚くのは東京の都心や、ブランド力が高い街でも寂れているという事実です。

のぶりんさんは地方だけでなく、都心の状況も動画で紹介する

 まず家賃が高すぎるんでしょうね。地価が高くなりすぎて、資本力がないと参入できない。都会が個人では挑戦できない場所になっている。代官山というおしゃれな街を歩いている人は多いけど、テナントは結構空いている。あとコロナの影響も大きかった。汐留の大手広告代理店が入っているビルも飲食店がごっそり抜けました。コロナでリモートワークが当たり前になって、売上が落ちたんでしょうね。

——全国の廃れた街を見て思うことは?

 地元の方がどう思うか分からないんですけど、富山市は頑張っていると思いますよ。駅周辺に都市機能を集中させて、道路も大きい。

 でも、意外に知名度の高い地方の街でも、片側1車線で道が狭くて、駅前に行きづらいなんていうところもありますよ。そういう地域の駅前は一気に廃れていますね。とはいえ、今さら駅前の道路を広くしても、郊外のショッピングセンターからお客さんを取り戻すのは難しい。

 今後の日本はどうしても廃墟に近づく街もある。消滅する都市も出てくる。でも、歯を食いしばっているところもあるんです。僕の頭ではあまり難しいことも言えませんが、YouTubeでは地域再生のヒントみたいなものも紹介できているかもしれません。素人目線ですけどね。

——今後は?

 海外に行ってみたいですね。すぐに思い付くのはサンフランシスコ。あそこも最先端の都市だったのに地価が高騰した結果、荒れてしまった。

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