そもそも体はなぜ疲れるの? 

体が感じる疲れには大きく二つの要因があります。「中枢性疲労」と呼ばれる脳の疲れと、「末梢性疲労」と呼ばれる体の疲れ(筋の緊張による疲労、疲労関連物質の蓄積など)です。これらの要素が重なって、体のだるさや痛みにつながります。年齢を重ねるにつれ「疲れが抜けにくくなったな」と感じるのは、自己治癒力が追いつかなくなったことが原因の一つですが、うまく疲労をコントロールしたり、疲労しにくい体と心を作ることは絶対にできると考えています。

疲労回復には、健康の三大要素である「運動」「食事」「休養」(睡眠)のバランスが重要ですが、「アクティブレスト(積極的休息)」という言葉が、今アスリートの間で注目されています。これは疲労がたまっている時に軽い運動をすることで、より速く、元の良い状態に回復させるというスポーツ科学に基づく考え方です。 

疲れているからといって寝て過ごすのではなく、ウォーキングで汗を流したり(通勤やお買い物の時にもなるべく歩く習慣をつけましょう)、ストレッチで柔軟性を回復することで血流が良くなり体のコンディションは向上します。また、アスリートも実践する入浴法や最近話題の「筋膜リリース」を行うことで、痛みや怪我の予防にもなります(これは次回以降に詳しくお伝えしましょう)。

 

まずは正しい姿勢を知る

●立ち方


疲労を防ぐ・回復させるため、一番初めにするべきことは普段の姿勢の見直しです。最近増えているのは、“スマホ症候群”による猫背姿勢です。けんしょう炎、ドライアイ、肩や首のこりも引き起こすのでスマホの使いすぎは禁物です。また、患者さんを見ていると、体に痛みが出てきた時にそれをカバーしようと姿勢のバランスを崩し、また別の負担を引き起こすという悪循環に陥っている方が多く見られます。

正しい姿勢のチェック方法として、立ち姿を横から見た時に、①外耳 ②肩 ③太ももの外側 ④前ひざ ⑤くるぶしの5カ所が、縦に真っ直ぐ結ばれるラインが理想と言われています。壁に頭、背中、お尻、かかとをくっつけて立った時に、腰に手のひらが入る程度が良いでしょう。毎朝立ってみて、チェックする習慣をつけると良いですね。

●座り方


デスクワークが多い方は座り方にも十分注意しましょう。間違った姿勢は、肩こり、頭痛、腰痛、慢性疲労を引き起こすだけでなく、股関節の動きが悪くなって骨盤が不安定になることで、猫背の原因にもつながります。足をまっすぐ立てて、深く腰掛ける姿勢を心がけ、背中ではなく、「ざ骨で座る」ということを意識しましょう。そして、お腹をデスクにできるだけ近づけ、パソコンや物を書くときに上半身に無理のない体勢が取れるよう、椅子の高さも調整してください。

 

やってみよう!職場で、おうちで、どこでも簡単ストレッチ

仕事や家事の合間にできるリフレッシュ法をご紹介します。こり固まった筋肉を柔軟にし、筋緊張を和らげてくれる効果があります。10日間続けることで習慣となり、長く継続できると言われています。がんばりましょう!

●肩こり、首こりをほぐし、目の疲れや偏頭痛を防ぐストレッチ

スマホ、PC症候群に見られる「巻き肩」の改善にも効果的です。

1.右手をお尻の下に入れ、右肩が上がらないようにロックします。そして、首を下に曲げ、左肩に鼻をくっつけるイメージで首の後ろを伸ばします。その体勢で20秒キープ。


 

2.続けて、同じ姿勢で今度は顔だけを右に向け、左の耳を左肩にくっつけるイメージで首の横を伸ばします。こちらも20秒キープ。※同じ動作を左右行います


 

3.立った状態で膝を前後に開き、片方の手を壁に当てて肩をロック。そのまま体を前方に持って行き、胸を開くようにします。肩甲骨を正しい位置に戻す効果があります。手の位置を上、中、下に分け、各20秒ずつ行う。


 

4.もう一度椅子に座り、大きく胸を張るようにし、両手を外旋させます。筋バランスを整える効果があり、1〜2時間おきにお仕事や家事の合間に入れると、より良い状態を持続しやすくなります。


 




青木 大輔(あおき だいすけ)
あおき接骨院 院長。ジュニア世代からオリンピック選手まで、アスリートの施術経験も豊富。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。健康運動指導士。http://aokisekkotsuin.com