国際的に活躍する大晶さん(右)、咲菜さんペア

ダンスで心身ともに成長

―ご兄妹がダンスを始めたきっかけは?
私自身ずっと競技を続けてきて、2005年に地元のふくのスポーツクラブで「子どもダンスうんどう教室」(現ハッピーHAPPYクローバー)を開設しました。ダンススポーツは、体をコントロールする力や柔軟性、瞬発力、持久力といったフィジカル面のみならず、創造性やパートナーを思いやる心、世代や国・地域の壁を越えてコミュニケーションする能力など、さまざまな力を育んでくれます。「子どもに学ばせたいことはダンス一つで全て叶う!」と確信し、我が子も教室に入れました。お兄ちゃんが小学校1年生、妹が幼稚園年少のときです。

ダンスを始めた頃の大晶さん(後列中央)と咲菜さん(前列右)

何事も経験だと思い、その年に長野で開催された大会に兄妹ペアで初出場しました。妹は負けん気が強いのですが、緊張しやすくて。一方のお兄ちゃんは一見シャイに見えますが、実は肝が据わっていて頼もしい。初めての大会、しかも大勢の前で堂々と演技ができたのは、二人一緒だったからかもしれません。

ハードな練習「当たり前」に

―小学生の頃から全国大会を制するなど、トップ選手として活躍してきました。当時から相当の練習量でしたか?
朝起きて登校前にまず1時間ほど。放課後も宿題を片付けた後、夕方から夜にかけて練習していました。土日は、大会がなければ一日中です。その合間に他の習い事もしていたので、かなり多忙でしたが、それを「当たり前」にしてしまいました。

全英ダンス選手権大会に日本代表として出場し、ファイナル進出を果たした大晶さん(当時小6)と咲菜さん(同3)=2010年、英・ブラックプール市

―我が子を指導する難しさもあったのでは。
本当に大変でした。普段は感情的に怒るのではなく「危ないことは叱る」というスタンスを心がけていましたが、ダンスとなると全然ダメ。特にお兄ちゃんに対しては、感情のコントロールが利かないまま、全てをぶつけていました。

妹はまだ幼かったし、兄が指導されているのをそばで見ているので、こちらの想像以上にできてしまう。対してお兄ちゃんには「もっと頑張れ」と。だから「他の子と比べるのではなく個性を伸ばす」という子育て論を目にするたびに「自分は全然できていない」と落ち込みました。ダンスは比較競技なので、戦略を練る中で運動能力の高い子と比べてしまうし、兄妹でも比べてしまった。よく潰れずに堪えてくれたと思います。

早織さん(中央)の指導で練習に励む兄妹=2011年

(後編に続く)

大西大晶(おおにし・ひろあき)1998年生まれ
大西咲菜(おおにし・さきな)   2001年生まれ
南砺市福野地域出身、都内在住。大晶さん6歳、咲菜さん3歳のときに一緒にダンススポーツを始める。日本最高峰の「三笠宮杯全日本選手権」スタンダード部門(2021年、23年)や同ラテン部門(20年、22年)、国際大会「WDSFオープン」10ダンス部門(22年)を制するなど、国内トップクラスの選手として活躍中。妹の陽来里(ひらり)さんも同競技の選手。
YouTube:https://www.youtube.com/@dancerscollege