9月1日は防災の日。1923(大正12)年の関東大震災発生日に合わせ、防災意識を高めようと1960(昭和35)年に制定された。webunプラスではこれまでも、地震や豪雨に備えるための取り組みや家庭でできる対策を取り上げてきた。過去の記事を振り返りながら、夏から秋にかけて多い自然災害の特徴と備えをあらためて確認したい。

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 夏から秋にかけて、日本列島は台風の進路に当たりやすい。暦の上でも9月1日ごろは古くから人々が台風を警戒してきた「二百十日(にひゃくとおか)」に当たる。台風が運ぶ暖かく湿った空気は前線や山地にぶつかり激しい雨となり、各地で大雨災害を引き起こしてきた。特に1959(昭和34)年9月26日に紀伊半島に上陸した「伊勢湾台風」は富山県内の死者4人を含む約4700人が犠牲となり、翌年の防災の日制定のきっかけともなった。

 急流河川が山から海へ流れ込む県内の地形は、豪雨となると氾濫や土砂災害の危険が高まる。1934(昭和9)年の豪雨では、庄川や黒部川で洪水が発生し深刻な被害をもたらした。治水事業の進展で洪水の被害は軽減されているものの、2004(平成16)年10月に台風で神通川が増水し、県内では147棟が床上浸水、343棟が床下浸水するなど被害は後を絶たない。

 近年は短時間で集中して強い雨が降り、家屋の浸水や中小河川の氾濫、アンダーパスでの車両水没被害などが発生するケースも目立つ。今年8月には線状降水帯の発生や、短時間に猛烈な雨が降る「ゲリラ豪雨」で被害が相次いだ。

日常の中で備えを

 突発的に襲ってくる災害に対しては、日常の中で備えを整えておくことが欠かせない。以下のポイントを確認したい。

【非常用持ち出し袋と備蓄の準備】水、食料、携帯ラジオ、懐中電灯などを入れた非常用持ち出し袋を準備しよう。備蓄は最低でも3日分、できれば1週間分が推奨されている。普段から食べているレトルト食品や缶詰、飲料水などを少し多めに買い置きし、食べた分を買い足していく「ローリングストック法」もおすすめだ。このほか具体的な避難生活をイメージし、「携帯トイレ(簡易トイレ)」「モバイルバッテリー」「常備薬」「生理用品などの衛生用品」などが必要ないか検討したい。

【避難場所と経路の確認】住んでいる市町村が公開しているハザードマップで、自宅や職場周辺の洪水や土砂災害のリスクを確認。安全な避難場所やそこまでの経路を家族で話し合い、実際に歩いてみるなど、具体的な行動をシミュレーションしておくことが、いざという時の落ち着いた行動につながる。状況に応じて自宅の2階以上に移動する「垂直避難」や、安全な場所にある親戚・知人宅へ身を寄せる「縁故避難」も有効な選択肢だ。

【自宅の安全対策】2024年1月の能登半島地震では、富山県内でも家屋の倒壊や断水が発生し、揺れへの備えの重要性が改めて示された。家具の固定や建物の耐震補強は、命を守るだけでなく、自宅で避難生活を送る「在宅避難」を可能にするための重要な条件となっている。

【情報の入手方法の具体化】災害時には、テレビやインターネットが使えなくなる可能性がある。電池で動く携帯ラジオや紙のハザードマップも用意したい。

【「共助」の視点】「自助」(自分で備える)に加えて、「共助」(地域で助け合う)の重要性も高まっている。災害時には、隣近所で声を掛け合い、高齢者や体の不自由な方の安否確認や避難の手助けをすることも大切だ

 防災の日は、過去の被害を思い起こし、教訓を次世代へとつなぐ日でもある。一人ひとりが備えを重ね、次の災害時に命を守る確かな力としたい。(防災士・本田健司)

防災の日=政府、地方公共団体等防災関係諸機関をはじめ、広く国民が、台風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波等の災害についての認識を深めるとともに、これに対する備えを充実強化することにより、災害の未然防止と被害の軽減に資する。(内閣府「防災情報のぺージ」より)