次々と話題作に名を連ね、演技の幅を広げ続けている瀧内公美さん(高岡出身)。9月末にスタートし、現在放映中のNHKドラマ10「シバのおきて〜われら犬バカ編集部〜」での犬との共演も新しい挑戦だ。柴犬専門雑誌の編集部を舞台にしたドラマの中で、言葉の通じない犬たちと向き合い、演技を超えた生き方を学んだという。(聞き手・田尻秀幸)

——全9回の撮影を終えて、ドラマに対してどのような思いがありますか。

 温かく穏やかに楽しめる作品になったなと思います。それは福助を演じた「のこ」たち、柴犬の空気感のおかげ。みんなリラックスしてお芝居をしていたので、その空気感がちゃんと映し出されていますね。大掛かりな事件が起きるわけではないんですが、人間愛も動物愛も詰まった作品になったなと感じています。

のこと息ぴったりの瀧内さん=NHK

——今回演じたのは、主人公である雑誌編集長の妻役ですね。

 大東駿介さん演じる相楽俊一の妻ですね。相楽俊一という人物は猪突猛進といいますか、自分の信念を貫くタイプ。一つのことしかできないんです。私はおおらかにそれを見守りつつも、大事なところだけ助言をする大黒柱的な存在です。どーんと土台を整備して、帰ってくる場所を保ちます。今回は非常に個性豊かなキャラクターが多いので、私もちょっとアクセント的に濃く演技した部分はあります。基本的にはチャーミングでいようとは思っていましたね。

——これもNHKのドラマですけど、2019年の「ゾンビが来たから人生見つめ直した件」でも大東さんと共演していましたね。

 デビューした時からご一緒しているので、私の空気を察してくださいますね。安心感を持ってお芝居できました。たとえば、のこ(福助役の柴犬)の反応を見ながらみんなが泣くとか笑うとか。技術的に求められるものが多かったんですけど、大東さんの存在は大きかったと思います。

NHK提供

——柴犬のドラマですが、瀧内さん自身は犬派ですか、猫派ですか。

 どっちも好きですよ。まあ、猫も好きなんですけど、最近は特に柴犬です。このドラマの影響で若干ワンちゃんが優勢になりました(笑)。

——飼ったことはありますか。

 いえ、家族に迎えたことはないんですよ。

——「飼う」ではなく「家族に迎える」という言い方に愛情を感じますね。

 もともと「飼う」という言葉が苦手なんです。すごく違和感があります。だって家族じゃないですか。それなのに「飼う」って表現するのは、扱い方が人間と違うと思いますよ。

 

柴犬への愛

——今回、このドラマのオファーを受ける際の決め手は。

 オファーに対して「やってもいい」なんていう気持ちは全くありません。タイミングが合えば、私は一つでも多く現場に立つことを大切にしています。今回もご縁があってこの作品に出演させていただきました。でも、お話を頂いた時、名前を呼ばれたワンちゃんみたいな反応をしてしまったんです。「え、柴?」って(笑)。何よりも私は本当に柴犬が大好きなので、こんな奇跡的なお仕事があるんだと思いました。

 あと、動物との演技は難しいとされているんですよ。彼らは人間と違って予測不可能な反応をするから、その中で役者は試される。単に犬好きというだけではなく、一緒にお芝居をすれば学べるものがたくさんあります。やらせてもらえるなら何が何でもやりたいと思いました。

演技への情熱を語る

——犬との共演ということで心がけたことはありますか。

 コミュニケーションですね。知らない人がいきなり一緒にお芝居しようって言っても、人間だって嫌じゃないですか。のこに初めて会う時も「初めまして。今日からあなたのママの役やるよ」ってお話にいきました。のこは非常に頭がいいので、私の言葉にも素直に反応してくれました。そういった感じで、ちゃんと目を見てコミュニケーションを多く取りました。

和やかな現場

——今回のキャスティングは原作者から「出演者は犬が好きな人にしてください」と言われていたそうですね。

 人間は嫌いな人とでもお芝居できるかもしれないけど、犬は分かっちゃいますからね。

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