中国ならではのスケールの大きな動物園や水族館、豊富な海産物を生かしたグルメ、新たな海辺開発エリア、歴史や文化を感じさせる街並みー。大連市は富山県と長く交流してきた遼寧省で瀋陽市に次ぐ第2の都市。中国東北地方有数の港湾・貿易都市であるとともに、歴史的建造物が今も残る観光都市としても知られる。富山-大連便を活用して7月上旬に行われたメディア向けのツアー(ファムツアー)に参加し、多彩な魅力に触れた。

 まず最初に筆を割きたいのは、なんと言ってもジャイアントパンダ。日本では上野動物園の2頭が相変わらずの人気者で、行列に並んで数分だけの対面…なんて経験をした人も多いのでは? この2頭は2026年2月に返還期限を迎えるため、返還前に一目見ようと、さらに行列が長くなる可能性もある。でも大連市では、そんな慌ただしさとは無縁のゆったりとした時間が流れていた。

市街地の喧噪から離れ

 パンダがいるのは白雲山風景区の丘陵地帯に位置する「大連森林動物園」。7・2平方キロメートルの広大な敷地に約200種2000頭が展示されているという。

 宿泊先のホテルのある大連市中心部から動物園までは、ツアーバスで20分ほどで到着した。豊かな自然に囲まれ、市街地の喧噪から少し離れた森の中の動物園というイメージだ。

大きな入場門と動物型に刈り込まれた植木が印象的な大連森林動物園=2025年7月6日

 大きな入場門に圧倒されながら園内へ。お目当てのパンダ館に入ると、ちょうど1頭が餌を食べているところだった。笹や竹を器用につかんで食べる様子はいつまで見ていても飽きない愛らしさで、夢中でカメラのシャッターを切った。ちなみに笹や竹はパンダの主な生息地である四川省産というグルメぶりだ。

一心不乱に餌を食べるパンダ。親指の代わりに「第六の指」と呼ばれる手首の骨が出っ張った部分でじょうずに餌をつかむ

 もう1頭は、ゴロンと寝そべったり、お尻を木材にこすりつけたりと、のんびり過ごしていた。動く様子を動画に収めることもできた。展示されていない1頭を合わせると森林動物園のパンダは計3頭。性格や仕草も三者三様で、見慣れてくると区別がつくらしい。

なんとなく人間味を感じるくつろぎ方をするパンダ

午前中が狙い目

 今回は幸運なことに食事や動き回る様子を観察できたが、漢字で「大熊猫」というだけあって、日中は猫のように寝ていることも多いそうだ。そのため動いているパンダを見たい場合、午前9時の開園直後から午前中にかけてが狙い目になる。

 

 日本ほどではないものの、パンダの飼育スペースの周囲には多くの人が集まって見学していた。「1人〇分」「行列に並んで順番に」などの制限はないため、表情豊かな仕草をじっくり観察できるのがうれしい。個人的には3頭の区別がつくようになるまで眺めていたいところだ。

パンダを見る来場者
パンダ土産も充実。ぬいぐるみを一つ購入した

 上野の2頭が中国への返還期限を迎える2026年2月以降は、日本でパンダが見られなくなる可能性もある。パンダを見るなら富山-大連便という時代が来るかもしれない。

癒やしの〝白鯨〟

 同じく大連市中心部から20~30分ほど車を走らせると、大型海洋テーマパーク「大連老虎灘(ラオフータン)海洋公園」に行くことができる。園内には南極や北極の生き物を集めた世界最大の極地館がある。館内に極地の環境を再現し、シロイルカ、ホッキョクグマ、セイウチ、ペンギンなど3000頭以上の極地動物を展示している。

 館内でにっこり笑っているかのような表情で出迎えてくれたのが「白鯨」。日本ではシロイルカやベルーガと呼ばれる。2頭が寄り添うようにゆったりと水槽の中を泳ぎ回る様子を目の当たりにすると 、心がふわりと軽くなる。近くにはホッキョクグマが展示され、肉食獣ならではの迫力に圧倒された。

水槽の中をゆったりと泳ぐ〝白鯨〟。にっこり笑っているようにも見える
ショーでは運良く選ばれたお客さん(左)に、白鯨が口から水を吹きかけてくれる

 アシカやイルカのショーも行われている。動物たちのパフォーマンスは日本と似ている部分もあるが、人間の出演者が本格的なダンスやアクロバットを披露しており、言葉が分からなくても見応えがあった。海洋公園の動画の後半に一部を紹介しているので、ぜひご覧いただきたい。

見事なジャンプを披露するイルカたち
 

 無数のクラゲが照明に照らされてふわふわと漂う幻想的な展示もあり、まるで海中イルミネーションのような美しさ。映えスポットとして有名らしく、若者や親子連れが熱心に写真を撮っていた。

イルミネーションさながらのクラゲの展示
映えスポットとして、写真を撮ってる人も多かった

とにかく広い!

 動物園も海洋公園も、とにかく広くて展示内容が充実している。1日中いても飽きることはなさそう。歩くのが大変な場合は、有料の電動カートもレンタルできる。観覧車など遊園地のような大型遊具もあり、家族連れにぴったりの観光スポットだ。

◇近日公開予定の「富山から大連へ(2)」では大連グルメの魅力をたっぷり紹介する。

大連便の利用拡大目指す

 今回のツアーは、富山空港国際路線利用促進協議会が7月5~9日に実施。日本からの渡航需要(アウトバウンド)を喚起し、富山-大連便の利用者拡大を目指している。

 大連は人口が富山県の約8倍の約750万人、面積は富山県の約3倍の約1万2500平方キロメートル。県関係企業を含む日系企業も多数進出している。富山県と遼寧省は2024年に友好県省締結40周年を迎えた。同年、黒部市と大連市が友好協力関係を締結した。

 大連便は1998年に就航し、新型コロナウイルスの影響で2020年から運休していたが、24年6月に4年4カ月ぶりに運航を再開した。25年7、8月は週2便で運航する。機材繰りの影響で9月3日から10月25日までの計16便が運休となる予定。