サッカーのJ2カターレ富山が17試合ぶりの勝利を手にした夜だった。6月28日の千葉戦後、取材エリアで顔を合わせたMF布施谷翔(24)は笑みをこぼした。もしかしたら、照れ笑いだったのかもしれない。前節のいわき戦で取材を受けた際、目を潤ませていたのを記者に知られていたから。「めっちゃうれしいですよ。本当に長かったし、ここまで自分たちがやってきたことを疑うこともあった」。ホッとした表情で、感慨深げに話した。

暑さに負けずボールを追うMF布施谷=6月25日、北陸電力総合運動公園

 長い長いトンネルだった。チームは3月9日の磐田戦を最後に、第21節の千葉戦で白星を挙げるまでチーム最長記録を更新する16試合勝ちなし。5月27日には小田切道治監督の退任と安達亮氏の新指揮官就任を発表した。ただ、荒療治もすぐに結果は出なかった。安達監督の就任後初戦の秋田戦こそ2―2で引き分けたが、6月8日の水戸戦からは3連敗。16試合勝ちなしとなった敵地でのいわき戦では、試合後にゴール裏のサポーターからの厳しい言葉もあった。

 ロッカールームに引き上げる布施谷は、泣いていた。ふがいない敗戦に悔しさがこみ上げたのか。それもある。はっきりと言えば、安達監督が就任してからの試合で最も内容が悪かった。

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